本さえあれば、そこは図書館になる。『世界の不思議な図書館』
記事:創元社
記事:創元社
この本に登場する図書館(あるいは図書室と呼んだ方がいいものもある)は、サイズも場所もその成り立ちもさまざまだ。
ラオスでは「ゾウの移動図書館」が活躍している。山奥にある村には当然、図書館なんてものは存在しない。本はゾウの背中に乗って、森の木々をかき分けやって来る。限られた本の周囲に村の子どもたちが集まる。借りられるのはひとり1冊まで。1冊返したら別の1冊と交換ができる。それがここでのルールだ。
一方で、この本には巨大な近代建築の中に設けられた大学図書館が登場する。所蔵文献は数十万冊。書架には色とりどりの背表紙がきれいに収まっている。白を基調にした閲覧エリアは広々としていて、ガラス窓から陽光が差し込む。各フロアは大きな吹き抜けでつながり、利用者はゆったりとした気分で膨大な知にアクセスすることができる。
「本さえあれば、そこは図書館になる」は本書の初版の帯につけた惹句だが、この言葉の通り、どちらも立派な図書館だ。共通点はそこに本があって、読みたい人がいることだけ。考えてみると、世界各地でこのシステムが地続きに機能しているのは、不思議といえば不思議な話だ。
図書館の歴史はとても古く、「紀元前7世紀にはアッシリアに粘土板の図書館があり、また古代最大の図書館といわれるアレクサンドリアの図書館には、紀元前3世紀にはすでに所蔵資料の目録が備えられていた」と日本図書館協会のホームページにある。
粘土板に何かを書き記し、それを一か所に集める。こうした行為はもう、古くから人間の内奥に備わった根源的な欲求なのだろう。そんな時代から数千年の時を経て、今や情報はデジタルデータになり、サーバ内にほぼ無限に収められるものになった。しかしその一方で、図書館という「営み」は今も変わらず存在しているし、これからも続いていくはずだ。
本書が垣間見せてくれるのは、現代に至っていよいよ成熟期を迎えた営みの百花繚乱な姿にほかならない。ぜひ、その様子を堪能してほしい。