「お互い様文化」をあえて甘受しよう ー自然災害が多発する日本で、わたしたちが知っておきたいこと
記事:朝倉書店
記事:朝倉書店
ボランティアであちこちにお邪魔すると、「ボランティアさんにきてもらって、『もったいない』」という言葉をよく聞く。
2014年8月中旬、兵庫県丹波市を中心に襲った豪雨災害で、筆者は神戸学院大学社会防災学科の学生たちとボランティアに入った。ある古い民家にお邪魔したとき、お昼の休憩時に、その家の初老の女性と雑談したときにも聞いた。「ボランティアさんが今日くるといわれるので、私は昨日一晩中、家の中をきれいに掃除しまし た。(働いてもらうのが)もったいないから」。ぽつりと漏らした一言に思わず笑ってしまい、そして、考え込んでしまった。
同じようなことが、2年後の熊本地震の熊本県西原村でもあった。ボランティアセンターにくるボランティアの要請が少ないから、一軒一軒回って、ボランティアの「押し売り」をして回っていたときだ。「あの家は全壊かな?」と近づいた。かなり壊れていて、家の中の物が手付かずだった。「奥さん、ボランティアに来ましょうか?」と声をかけると、「えっ、ボランティアってきてもらえるのですか?」。「ええすぐに来ますよ」とやり取りして、10人ほどの学生を連れてそのお宅のボランティアに入った。
どちらも笑えない実話だ。まだまだわが国では、「ボランティアにきてもらうのは申し訳ない」、「うちは何とかなる」という奥ゆかしい考え方が強い。しかし、私たち神戸の人間は1995年の阪神・淡路大震災の際に、全国から多くのボランティアに来てもらい、復興の大きな力になってもらった。だから、その後に起きた災害では、「あの時はありがとう」、「お互い様やからね」、「今度また助けてもらうからね」という気持ちでボランティアに行く。
神戸から新潟、東北、熊本と大地震は続き、水害も多発している。これほど全国のどこかで毎年のように起こる大災害。そろそろ、「お互い様文化」を醸成させようではないか。
また、ボランティア活動で忘れてはならないことがある。それは、災害の結果出たごみやがれきは、最初からごみやがれきではないということ。その家では、大切なおもいでの品かもしれないし、忘れられない物かもしれないのだ。
2016年の熊本地震の被災地で、ボランティアに行った女子学生がつぶやいた一言がいまも忘れられない。「ボランティアで一生懸命になっていると、ごみを捨てることや、家の中を片付けることに夢中になって、その家に住んでいる人の気持ちをつい忘れてしまっている」。ボランティアをしながら、ほかのボランティアが何の悩みもなく家財道具をポンポンと運び出して、捨てる姿を見て、心が痛くなったという。最終的に災害廃棄物となったごみも、初めからごみではないということをかみしめなければならない。