かつてない「木」の本 『種類・特徴から材質・用途までわかる 樹木と木材の図鑑』
記事:創元社
記事:創元社
本のタイトルは、『種類・特徴から材質・用途までわかる 樹木と木材の図鑑――日本の有用種101』。内容をぎゅっと詰め込んだので、かなり長くなってしまいました。
企画を考え始めたきっかけは、木の関係者との日ごろの会話です。木の関係者といっても職種はさまざま。山で伐採や造林に取り組む林業関係者、製材や木材販売に携わる方々、ネイチャーガイド、木を素材にしてものづくりする木工関係者、木育の活動に携わる皆さん……等々。
日ごろから立ち木を見ている林業関係者やネイチャーガイドは、「山に生えている木については詳しいけど、製材されたら区別するのに苦労する」「葉っぱは見分けられる。でも、木材のことを知らないし、何に使われているか知りたい」と言います。一方、木材関係者や木工家は、「木目の違いはわかるけど、生えている木や葉っぱは見極めできない」と話すのをよく聞いていました。
それならば、木に関わっている人や、木のことをもっと知りたいという人向けに、ビジュアル重視でわかりやすい本がつくれないかと思ったのです。さまざまなプロフィールの人たちに手に取ってもらえるように、立ち木、葉、樹皮、木材、木の用途(道具類や建築物など)を、1樹種につき見開き2ページにまとめて紹介することにしました。言い換えると、1樹種について、川上から川下までを2ページで理解できる内容ということになります。
今まで、樹木図鑑や木材図鑑はあっても、木を総合的に紹介した図鑑は見当たりませんでした。なぜ、なかったのか。取材を始めて、その理由がわかりました。かなりの労力が必要なのです。時間と手間のかかる作業であることは予測していましたが…。
本書の掲載写真は、渡部健五カメラマンがほぼすべて撮影しています。西川も撮影に同行し、二人で北海道から沖縄まで、山や森の中、歴史的建造物や資料館、職人や木工家の工房などを訪ね歩きました。特に苦労したのが、特定の木が使われている道具や家具などを探し出すことでした。古い道具類では、使用材を特定するのが難しかったのですが、学芸員や研究者などからのアドバイスを参考にさせてもらいました。
おかげさまで、ほぼ企画段階で思っていたとおりの本が出来上がりました。刊行後、「山で伐った木の使用例について考えるようになった」「森の観察会でのネタ本にさせてもらっています」などの声が寄せられています。日ごろ、あまり意識していないかもしれませんが、私たちにとって木のない生活は考えられないでしょう。この本が、身近にある木について、もっと興味を持ってもらう一助になればと思います。
*本書の内容は、創元社のYoutubeチャンネルにてご視聴いただけます。