日常から宇宙へ。詩的で美しい大人の科学絵本 『ことばにできない宇宙のふしぎ』
記事:創元社
記事:創元社
「センス・オブ・ワンダー」は、自然から受ける、言葉にできない不思議な驚き。その気持ちは、いろいろな時にわきおこります。あるときは声高に、あるときはまるでささやくように、またあるときは、愛情や情緒不安定や憂鬱などの、ほかの気持ちの陰にかくれて……。
私がそれを感じるのは、たとえば、目が痛くなるほど空の星を何時間も見つめる夜。寝息を立てるように揺れる海を眺めているとき。もしくは、何とも表現できないような色に空が晴れ渡るとき。
何層もの岩と化石から成るこの世界は、きらきら輝くさまざまなイメージで私を立ち止まらせてくれます。一枚の葉にさえも心を奪われ、それまで考えていたことを忘れてしまったりもします。
宇宙や、目に見えないものや、物質を形作る微小なものに思いを寄せるとき、笑いと、抑えきれない涙とのバランスをとる必要があります。
私は、涙します。それがどんなに美しいか理解したくても、その入り口にも立てないから。私たち、ヒトという動物種が、あまりにも欠点だらけだから。なにもかもが、衝撃的なほど不確実で、私たちの存在さえも「壁のない部屋の天井に浮かぶ象」のように、夢みたいなものだから。
でも、だとしたら? 笑うこともできます。たとえば、森羅万象の中で人間という存在が議論の余地もないくらいちっぽけなものだと感じると、ほんとうにすべてのものがとんでもなく可笑しい、そんな気持ちでいっぱいになってしまうのです。私たちに頭脳がある? 変なの! いったい誰がこの世界の責任者だっていうわけ? おかしいよね。宇宙は膨張してる? 訳わからない! その秘密を守らなきゃって? どういう意味?
訳のわからないことの説明を見つけ、「無秩序」をなんとか整理しようとすることに、私たちは多くの時間を使っています。お互いを結び付けている限界からなんとか逃れようとし、避けられないことや無惨なことは、めでたく無視しながら。また、私たちは、自分自身を過去、現在、未来に分けて考えようとします。それは自分が変化したとか、もともとわかりきっていたことをより理解したと思えるように。また、過去を終わらせ、振り返ることなく新しいことを始める線引きのために。
困るのは、「混沌」が、いつもこのテーブルのすぐ向かいの席についていることです。広げた新聞ごしに、崩壊し色を失った星々の入ったコーヒーカップを手にしながら、私たちをちらちら見ています。「混沌」の方でも、待っているからです。あなたが「混沌」に気付くことを、混沌こそがあなたが今までに見た中で一番目がくらむようなものだと気付くことを、ようやくそれに気付いたあなたの中のすべての原子が叫び出すのを。「混沌」がどこにでも絶妙に仕込まれていることにあなたが気づき、しみじみと味わうのを。というのも、私たち自身も、決してほかのもの以上に秩序正しく設計されているわけではありません。時間とともに、縫い目はほころびていきます。その点で、あなたも宇宙も同じく、繊細で大変な奮闘をしているのです。
ですから、もしあなたが何かをきちんと終わらせられず、元どおりに戻せなかったとしても、できることはあります。炭酸ガスを水に入れて炭酸水を作るみたいに、可能性をいっぱい詰め込み、あなたの毎日の営みの中にずっと置いておくのです。私たちの中にある物語―すべてのものがどのようにしてそうなっているのか、私たちがそれをどれほど愛しているかという物語を、つむぎ続けるために。
この本が、その物語のささやかな一部になれたらと願っています。