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“青い鳥”が住む街は人間も暮らしやすい!――柳瀬博一『カワセミ都市トーキョー』

記事:平凡社

東京都心に暮らすカワセミ(撮影:柳瀬博一)
東京都心に暮らすカワセミ(撮影:柳瀬博一)

2024年1月15日刊、平凡社新書『カワセミ都市トーキョー』(柳瀬博一著)
2024年1月15日刊、平凡社新書『カワセミ都市トーキョー』(柳瀬博一著)

宝石のように美しい鳥

世界屈指の巨大都市、東京。

その都心部のあちこちでいま、カワセミが暮らしている。巣をつくり、子育てまでしている。

カワセミ。

全長18センチ。スズメと似たサイズの小鳥だ。

美しく、かわいらしく、しかも、かっこいい。

背中から尾羽は目が覚めるような明るいコバルトブルー。羽は、光の加減によってサファイアのような青にも、エメラルドのような碧にも輝き、頭部には深い緑に空色の宝石がちりばめられ、目の後ろとお腹はオレンジ色。喉元は白く、体の半分くらいもある巨大なくちばしは艶やかな黒。短い足は鮮やかな赤。 

……と説明するより、カラー写真1枚見ていただければ、カワセミの美しさ、かわいらしさは、おわかりいただけるだろう。

しかもかっこいい。カワセミは生粋のハンターだ。空から水の中に飛び込み、魚やエビやカニを生け捕りにする。

美しく、かわいくて、かっこいい。

だからカワセミはさまざまなメディアでもとりあげられる。

テレビ、雑誌、書籍、ウェブ。露出度が高いから知名度も高い。

皆さんも、カワセミの名前と写真くらいはご覧になった経験があるのではないか。

ただし、野生のカワセミを直接見たことがある人は、ましてや東京のような都会で見たことがある人は、あまりいないかもしれない。

カワセミと人間が共存する街 トーキョー

カワセミは、東京都心からいったん姿を消した。1950年代後半から1980年代にかけて、高度成長に伴う公害と家庭排水によって東京の水辺は徹底的に汚染され、川から魚もエビもカニもいなくなったからである。

餌がなければカワセミは暮らせない。魚やエビやカニがいる清流を求め、カワセミは東京を去り、山奥にひっこんだ。

かくしてカワセミは、「幻の鳥」になった。皮肉にも、ちょうど同じ頃、カワセミは「清流の宝石」として、メディアで盛んにとりあげられるようになり、この鳥は有名になった。

40年がたった。

2023年現在、カワセミは東京に戻ってきている。都心のあちこちに暮らしている。卵を産み、子育てを行い、ひなが次々と巣立っている。

しかも、カワセミが暮らす街は、東京屈指の高級住宅街ばかりである。

汚れなき自然を象徴する鳥、カワセミ。

自然を改変して人工都市に作り替えてきた人間。

そんなカワセミと人間が、どちらも人工都市の象徴のような東京に集まり、暮らしている。

つまり、カワセミの暮らす街は人間にとってもいい街、というわけである。

これは、自然の大切さをうったえるスローガンでもなければ、そうあればいいのにという理想でもない。すでにそこにある事実である。

世界屈指の人工都市東京は、世界屈指のカワセミ都市でもあるのだ。

カワセミは、なぜ人が好む東京に戻ってきたのか?

その謎を解明するのが、本書の使命である。

ようこそ、カワセミ都市トーキョーへ。

本書を読み終えたらあなたもカワセミストーカーになるはずだ。

そして東京という街がもっと好きになるはずだ。

『カワセミ都市トーキョー』目次

まえがき
第1章 ようこそ、カワセミ都市トーキョーへ
第2章 カワセミとはどんな鳥か
第3章 東京カワセミ日記――カワセミを知れば、東京の地理と歴史が見える
第4章 「新しい野生」の一部としての「東京のカワセミ」――餌は外来生物 巣はコンクリート水抜き穴
第5章 カワセミが住む街はなぜ「高級住宅街」なのか――「古い野生」が潜む場所
第6章 「新しい野生」と「古い野生」がつながる――カワセミ都市トーキョー
あとがき
参考文献

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