いま『災害廃棄物』についてを知る 〜迅速かつ適正な処理のために
記事:朝倉書店
記事:朝倉書店
普段から各家庭・事業所から出てくるごみは、災害時にも出る。また、避難所が開設されれば、避難者の生活に伴う避難所ごみが出される。これらのごみは、通常の生活時にも発生するものであることから、災害廃棄物にはあてはまらない。災害によって生じるものとしては、仮設トイレや避難所から排出されるし尿がある。また、片付けに伴う片付けごみと、被害を受けた家屋の解体に伴う解体ごみがあり、これらの全体が災害廃棄物である。
発災後にも生活ごみは出るが、しばらくの間は自治体が収集できない場合もあり(例えば、収集車両が被災してしまった場合)、しばらくは資源ごみの回収を中止する等の措置が取られることもある。避難所ごみは、他の生活ごみと同様に収集されることが多い。仮設トイレのし尿は、し尿収集車で汲み取り、処理施設まで運ぶことが基本となる。災害廃棄物については、住民が決められた場所まで運び、そこから先の運搬を自治体で行うことが基本であり、被災の程度が軽い場合等には戸別収集で対応することもある。住民が運び込む先は、自治体が設置する一次仮置場(2-6参照)が通常だが、地域の住民が一時的に設置・管理する集積場所を活用することもある。また、片付けごみの排出場所の周知が不十分な場合等には、道路わきや空き地に排出されてしまうこともあるため、その予防と発生した場合の事後対応が必要になる。被災者が家の中の片付けをひととおり終えるまでの期間(概ね1〜2か月)は、図1に示すように、多様なごみが様々な場所で出される。
災害廃棄物を適正かつ迅速に処理するには、「分けて出す」ことが原則である。まず分けるべきは、生活ごみと災害廃棄物である。生活ごみには生ごみが含まれ、腐敗による公衆衛生リスクを避けるには、素早く収集して処理することが求められる。しかし、災害廃棄物と一体的に出されてしまうと、大型のごみに紛れてすぐに収集できなかったり(図2)、収集効率が大きく低下してしまったりする。災害廃棄物についても、選別してから処理されることを考えると、品目ごとに分けて出すことが重要である(棚のプラスチック部分と木の部分を分けるような細かい分別ではない)。とくに、事故防止の観点からは危険物を分別すること、公衆衛生リスクの観点からは腐りやすいもの(濡れた畳等)を分けることが望ましい。一度混ざったごみは選別が困難になり、処理にかかる時間も費用も大きくなる。なお、被災者の立場からすると、一刻も早く家の中のごみを出して片付け、もとの生活を取り戻したいという思いがあるため、災害時に分別の手間を求めるべきではないという考え方もできる。実際、被災者からは「それどころではない」という声が聞かれる。しかし、分別することこそが迅速かつ適正な処理への鍵であり、廻っては住民のためであるという理解のもとに、被災地の状況を見つつ、分別の意義を説明しながら協力を呼び掛けることが重要である。
自治体が設置・管理する一次仮置場まで住民が自ら運び込むことが基本となる。住民は家の前等自宅の近くに出し、それを自治体が回収するという考え方もあるが、収集能力が追い付かずに地域の生活環境が悪化する、分別しておく場所がないため混合ごみの山になる、本来は出すべきではないごみが便乗して出される等の望ましくない事態を招きがちである。災害廃棄物の量が少ない、ある程度の期間であればごみを放置しておける空地が存在する、収集の応援が多く得られる等の状況があれば対応できるが、大量の災害廃棄物を集める方法としてはできれば避けたい。
他方、住民自らが一次仮置場まで運び込み、自治体は一次仮置場での分別管理に注力すれば、より管理がしやすい。しかし、この方法にも課題はある。まず、被災地の近くで一次仮置場の適地がないことがある。住宅密集地では空地が少なく、一次仮置場の要件を満たす土地がなかなか見つからない。また、一次仮置場までの運搬手段の確保も課題である。軽トラック等の運搬手段を持たない場合や、高齢等の理由により運ぶことが身体的に困難という場合がある。さらに、一次仮置場への搬入車両の渋滞がある。一次仮置場では1台ずつ順に災害廃棄物を降ろしていくため、数kmにわたる渋滞ができてしまうこともある。こうした場合には、地域ごとに臨時の集積場所を定めて活用する、ボランティアに運搬の支援を依頼する、部分的に戸別収集を実施する等の対応が必要になる。
また書籍冒頭に収録のカラーページのPDFをダウンロードいただけます。
以下リンクよりDLの上、ぜひお手元でご活用ください。
https://app.box.com/s/vzyum7ksdvy19znnud2wn4umrcp6wfdc
※リンク先は「BOX」という外部サービスになります。