災害時にボランティアを受け入れる〜有効な受援のために被災者(住民)ができること
記事:朝倉書店
記事:朝倉書店
ボランティアの力が十分に発揮できていない場合の背景の1つには、「本当に手伝ってもらっていいのか?」「どこまで頼んでよいのか?」「自分だけお願いするのは気が引ける」といった不安や戸惑いがあるかもしれない。ボランティアの力を、被災地の復旧・復興に活かすためには、まずボランティアを受けるべき人たちが、受けるべき支援をきちんと理解することが大事ともいえる。そのためにはまず、ボランティアの作業内容、つまり一般的に支援してもらえる内容※1について理解を深めることが重要である。
※1)龍谷大学によるアンケート調べでは、ボランティアのごみに関する活動内容は土砂やがれきの移動、選別、ごみの移動、分別等であった。
ボランティアが可能な内容についての周知を十分にすることも重要であろう。
内閣府では、被災したときに支援を受ける側の視点で、「地域の『受援力』を高めるために」という、「防災ボランティア活動とはどのようなものか」、「ボランティアを地域で受け入れるための知恵」等をまとめたパンフレットを作成している。これは内閣府のホームページ「防災ボランティア関係情報」からダウンロードできるが、災害ボランティアセンターや民生委員等の日頃の取り組みを見逃さないことや、住民しかわからない情報の提供の重要性が述べられている※2。これらの取り組みは、単に受援力を高められるだけでなく、地域内のつながりや助け合いを深めること、さらに発災後に地域外から参加されるボランティアとのつながりをつくるきっかけにもなる。可能であれば、行政とのかかわりの個所で紹介した「リーダー」等を増やすことは、受援力向上に大きく貢献するので、多くの方に手をあげていただきたい。
※2)概要として、次のようなことが効果的と述べられている。
被災地の外から集まるボランティアの人たちは、被災地の土地勘や被災地が求めているものが何かはわからない。被災地側から、どのような状況なのか積極的に伝えることが地域の「受援力」を高める一歩といえる。とはいっても、経験がないと、実際のボランティアの受け入れ時には、いろいろと気を遣う方も多いかも知れないが、被災者が積極的に情報発信することは重要である。
関連して、ボランティアにお手伝いをお願いする際には、自分の家だけでなく、回りの状況やだれが困っているのか等「地域の状況」をできるだけ具体的に伝えることも重要となることがあり、そのための情報収集も有用である。被災された方々のボランティアに対する自発性と共感力は、効果的な支援につながる。
ボランティアのほとんどの方は、困っている人を手助けしたり人の役に立ちたいと思っている人たちだが、残念なことに金品を要求したり窃盗が疑われることもあるようである※3。これと関連して、筆者が被災地で聞き取り調査をしていると、ボランティア終了後に貴重品がなくなった、という話を耳にしたことがあった。見知らぬ人が家を出入りすることになる場合、通常ならあたり前のことであるが、ボランティアを受ける側としては、財布や高価な時計等の貴重品はあらかじめ金庫等にしまうことも忘れないようにすべきである。なお、使用する道具についてボランティアが意図せず、つまり間違って持って帰ることもあり得るので、家の物には名前を書いたりテープを貼る等して容易に見分けられるようにすべきである。作業をして疲れ切ったボランティアが、間違えて持って帰った道具に途中で気付いて戻ってきてくれた、などは申し訳ない。
このようにボランティアは、原則として、被災地に負担をかけないよう、宿や水はもちろん、食事、道具等の準備を各自で行うので、それらの提供や報酬等も必要ない。道具も、被災者の自宅のものを追加で使ってもらってもよいが、基本的には災害ボランティアセンターが行うので心配はいらない。ただトイレについては作業場所の近くにあることが望ましく、災害VC等の派遣先とあらかじめ打ち合わせしておくとよい。
受け入れをすることになったら、自治会・町内会、民生委員・児童委員等の地域の実情に通じた地域のリーダーの人たちは、地元のボランティアとともに、パイプ役を務めて地域に紹介するとスムーズに進む※4。
※3)交通費、必要資材の購入、貸し借り等を含めて、どんなことでもお金のやり取りをすることはなく、さらに宿泊や飲食等を要求することも、ボランティアをする方にも禁じられているので、被災者もそれをよく理解し、万一求められても断るべきである。
※4) 実際に聞いた例では、同じように支援を申請していても(実はルートや訴え方が違うのかもしれないが)、ボランティアにきてもらえた家とそうでない家が近接していると、ご近所トラブルのもとになる、という例もあるようだ。また、大学等の学校からの派遣の場合、安全の確保が最優先されるため、ほかのNPO経由の団体の場合は可能な作業内容であっても、断わらざるを得ない場合もあるという。相手の立場や可能な内容をよく確認、相談して受け入れることが必要である。
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