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フランス流、聖バレンタインの過ごし方 雑誌『ふらんす』(白水社)2月号より

記事:白水社

フランス語学習とフランス語圏文化に関する、日本で唯一の総合月刊誌『ふらんす』(白水社)。2025年2月号の特集は「フランス流、聖バレンタインの過ごし方」です。[LOVE:photo © Louisesweetkitchen]
フランス語学習とフランス語圏文化に関する、日本で唯一の総合月刊誌『ふらんす』(白水社)。2025年2月号の特集は「フランス流、聖バレンタインの過ごし方」です。[LOVE:photo © Louisesweetkitchen]

雑誌『ふらんす』2025年2月号の「フランス流、聖バレンタインの過ごし方」特集は、「フランスのバレンタインデー」(トリコロル・パリ)をはじめ、「バレンタイン実用ワイン講座~あなただけのワインを求めて~」(鈴木隆芳)、「バレンタインにコニャックを」(中森保貴)、「恋人たちの聖地、サン・ヴァランタン村」(東ゆか)、「パリ、サロン・デュ・ショコラにかける夢と情熱」(安藤博文・山本ひとみ)を掲載。
雑誌『ふらんす』2025年2月号の「フランス流、聖バレンタインの過ごし方」特集は、「フランスのバレンタインデー」(トリコロル・パリ)をはじめ、「バレンタイン実用ワイン講座~あなただけのワインを求めて~」(鈴木隆芳)、「バレンタインにコニャックを」(中森保貴)、「恋人たちの聖地、サン・ヴァランタン村」(東ゆか)、「パリ、サロン・デュ・ショコラにかける夢と情熱」(安藤博文・山本ひとみ)を掲載。

 

フランスのバレンタインデー

 フランスで、2月14日の夕方に街を歩いていると、花屋さんの前にはたいてい行列ができていて、大きな花束を抱えて家路を急ぐ人々ともたびたびすれ違います。大切な人に愛のメッセージを届けたいという気持ちが街中に漂う、そんな夕暮れのひとときに、心が温まります。この国では、バレンタインデーは純粋に「愛する人にその思いを形にして伝える日」なので、「義理チョコ」のような形式的な贈り物をすることはあり得ません。また、まだ付き合っていない相手に愛を告白するというよりは、カップルが愛を確かめ合う日という意味合いが強いです。贈り物の定番はやはりバラを始めとする花束で、花屋さんはこの1日だけで、普段の1週間分を売り上げるとも言われています。

2月14日はフランス全国のお花屋さんが、こんな風にバラの花束で埋め尽くされる。
2月14日はフランス全国のお花屋さんが、こんな風にバラの花束で埋め尽くされる。

 一方、ここ数年、これまではほとんどなかったバレンタイン限定のパティスリーやチョコレートが増えてきたのは興味深い現象です。イースターが近づくとウサギやヒヨコ形のチョコレートが増えるのと同じように、最近ではバレンタインに向けて、ハートやバラのケーキやチョコレートが有名パティシエやショコラティエのウィンドウに並ぶようになりました。彼らが日本を訪れたときに、日本でのバレンタインの盛り上がり方を見て、バレンタインスイーツの概念を逆輸入する形になったのではないかと想像しています。

パリがテーマのコフレ入りラ・メゾン・デュ・ショコラ2022年のバレンタインチョコ。
パリがテーマのコフレ入りラ・メゾン・デュ・ショコラ2022年のバレンタインチョコ。

 

バレンタインデーの由来

 バレンタインデーはフランスではSaint-Valentin(サン・ヴァランタン)と呼びます。これは、キリスト教において、2月14日が聖ヴァランタンの祝日とされているからです。この日だけが特別なのではなく、1年365日、どの日にも聖人のファーストネームが割り当てられていて、フランスではどの手帳にも必ず記され、その日の名前を持つ人におめでとうと伝える慣習が今も残っています。

 

トリコロル・パリ監修『まいにちふれるフランス語手帳2025』(白水社) 月や曜日はもちろんフランス語で記載。フランスの祝日やその日の聖人名に加えて、折々のフランスを感じられるエッセイやひとことを掲載。まいにちフランスを感じることのできる手帳です。バレンタインデーの贈り物にいかがですか? 
トリコロル・パリ監修『まいにちふれるフランス語手帳2025』(白水社) 月や曜日はもちろんフランス語で記載。フランスの祝日やその日の聖人名に加えて、折々のフランスを感じられるエッセイやひとことを掲載。まいにちフランスを感じることのできる手帳です。バレンタインデーの贈り物にいかがですか? 

*『まいにちふれるフランス語手帳2025』の紹介ショート動画はこちら

 

 ではなぜ、ヴァランタンが「愛の守護聖人」と崇められ、その祝日が2月14日になったのでしょうか。その由来は3世紀、ローマ時代に遡るというだけあって、さまざまな説があります。

 

【「愛の祝日、聖ヴァランタン」/Oldelaf - Saint-Valentin (Clip officiel)】

 

 当時のローマ皇帝クラウディウス2世は、若者が戦争に行きたがらないのは残していく恋人や妻子がいるせいだと、結婚を禁止しました。この命令に屈することなく、隠れて結婚式を執り行い続けたウァレンティヌス(ヴァランタン)司祭は、捕らえられて投獄され、2月14日、斬首刑に処されました。「監獄で死刑の時を待つ間に、ヴァランタンは看守の娘と出会った。彼の愛によって、盲目だったこの娘の目が見えるようになるという奇蹟が起こった。彼女に送った手紙の最後には『Ton Valentin(あなたのヴァランタン)』と記されていた……」という、真偽のほどは別として、とてもロマンティックな伝説も残されています。

 

【聖バレンタインの歴史】

 

 実在したとされるこのヴァランタン司祭の物語を踏まえて、のちの時代に聖ヴァランタンの日が制定されたという説も有力です。キリスト教がもたらされる以前から、ローマ人たちは毎年2月15日に豊穣と繁栄を願ってルペルカーリアという祭を行っていました。多神教の祭ながら、キリスト教がローマ帝国の国教となった以降も許されていましたが、男女の享楽の場となっていたこの祭が風紀を乱すことを嫌った5世紀末のローマ教皇ゲラシウス1世によってついに禁止されました。その代わりに、男女が知り合うきっかけになるという目的は残しつつも、よりキリスト教的な祭日が、ルペルカーリア祭の前日に定められたのでした。これが2月14日、まさに聖ヴァランタン殉教の日だったというわけです。

 

【Ça vient d'où la Saint-Valentin ?】

 

 その後、中世の間も、生々しい男女の出会いの日として考えられていたようですが、15世紀以降、文学などで次第に、よりロマンティックな愛の日として認識されるようになりました。そしてフランスで実際に、カップルが愛の象徴としてカードやプレゼントを贈り合うようになったのは1950年代からだそうです。

 

トリコロル・パリ

 

【雑誌『ふらんす』2025年1月号「フランス流、聖バレンタインの過ごし方」より、トリコロル・パリさんの寄稿を一部紹介:「パリ市の掲示板から届く愛のメッセージ」「毎年恒例! おしゃれなバレンタインデー記念切手」「バレンタインデーの定番プレゼントは?」など、続きは本誌で!

 

【“Every February You'll be my Valentine”/Katy Perry - Teenage Dream (Official Music Video)】

 

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