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木場貴俊さん「怪異をつくる」インタビュー 「妖怪を形づくるのは社会」仕組みを研究

木場貴俊さん=木場貴俊さん提供

 国際日本文化研究センター(日文研)プロジェクト研究員の木場貴俊さんが、日文研などでの研究成果をまとめた『怪異をつくる』(文学通信)を出した。江戸期を中心に、妖怪や天変地異がどのように記録されてきたかを丹念にたどることで、怪異の側から、当時の人々と社会の姿を照らし出した。

 貝原益軒といった当代一流の知識人である儒学者たちは、万物を構成する気の乱れによって妖怪などが生まれると説いた。「怪異を理性の世界に位置づけようとしている。『ひとだまはプラズマだ』といった説明をしたがる現代の私たちと、根っこは変わりません」

 江戸や大坂では盛んな出版文化を背景に、妖怪を娯楽として楽しむ人たちも現れた。新型コロナ禍のいま、疫病よけの言い伝えがあるアマビエがSNS上を飛び交う。「妖怪を形づくるのは社会。その仕組みを研究しなければ本当の姿は見えてきません」

 自身は幼稚園児のころ、テレビアニメ「ゲゲゲの鬼太郎」を見て、底知れない妖怪の魅力に取りつかれた。以来35年、「『沼』から抜け出せないまま、研究を続けています」。(上原佳久)=朝日新聞2020年5月20日掲載