人気の食べ物工作
―― 春は、葉っぱをはさみで切って遊ぶ「穴あき葉っぱ」などの“アウトドアおもちゃ”。暑い夏には射的やひもくじなど、おうちの中でできる“縁日あそび”。秋はハロウィンにちなんでオバケのおもちゃ。冬は「かおかお神経衰弱」など、家族みんなで遊べるおもちゃ。四季に合わせてたくさんの手作りおもちゃが紹介されていますが、テーマを季節にしたのはなぜですか。
子どもが生まれてから、四季をより強く感じるようになったんですよね。以前は建築設計事務所に勤めていたんですが、当時はものすごく忙しくて、四季に目を向ける余裕なんてありませんでした。だから、子どもと一緒に季節の移り変わりを感じて、日々の遊びに活かすようになって、人間に戻ったみたいな気がしていて。それで、我が家で楽しんできた季節のおもちゃを中心にまとめることにしました。
最後の章では、パーティーで使えるお手軽アイデアを紹介しています。大人だけならおいしい料理とお酒があればそれで十分ですが、子ども中心のパーティーって何をすればいいのか、悩んでしまうと思うんです。そんなときに使えるアイデアおもちゃやお菓子のレシピを載せました。
―― 特に人気のもの、思い入れの強いものはどれですか。
ビニール袋に油性ペンで色をつけて作るかき氷は、ワークショップでも人気ですね。ストローでつつくと、ザクザクと本物のかき氷みたいな音と感触が楽しめます。
食べ物工作が刺さる子って結構いるので、1作目の『ふきさんのアイデアおもちゃ大百科 ひらめいた! 遊びのレシピ』では紙皿ピザや本物そっくりのおでん、2作目の今回はかき氷のほかに餃子を入れました。餃子は丸く切った白いフェルトに粘土の具を入れて作るんですけど、黒い画用紙で作ったフライパンで焼き目をつけるところがすごく楽しいんですよ。自分でもお気に入りのおもちゃです。
―― ルビが振ってあるので、子どもも楽しめそうですね。
小学生だったら一人で作れるし、幼児さんだったら大人と一緒に作ってもらえたらと。完全に子ども向けじゃないというのがポイントです。
子ども向けの工作の本って、語り口調がすごく子どもっぽかったり、全体的にレベルが抑えてあったりするので、そこそこ工作ができる子にとっては物足りないと思うんです。私自身、子どもの頃に見た工作の本の中には、面白そうと思えるものが一つか二つくらいしかなくて。だから基本的に、子ども時代の自分が見て全部面白いと思えるような本を目指して作りました。
アイデアの種を探して
―― 工作は昔から得意だったのですか。
子どもの頃から工作が大好きでした。親が学校の先生だったので、英語のフリップに使った画用紙が家に大量にあって、自由に使っていいことになっていたんですね。それを使って工作ばかりしていました。もの作りが好きな親の影響もあって、ほしいものは手作りする、というのが当たり前の生活でした。
―― おもちゃ作家として活動を始めたきっかけは?
長男が生まれたのを機に、自然な流れでまた工作を始めたんです。チラシの顔の部分を切り抜いて、赤ちゃん用のフロアマットに貼りつけておくと、赤ちゃんが寄ってきてじっと見ててくれるんですね。その間に私はお茶を飲んだりできるので、これはいいなと。息子は2歳ぐらいの頃、トンネルのおもちゃにはまってましたね。段ボールに穴をあけてトンネルにして、車のおもちゃを走らせるだけなんですけど、夢中になって遊んでいました。
そんな風に、子どもの成長と発達に合わせておもちゃを作っていたところ、夫(プランナー/アートディレクターの佐藤ねじさん)から写真だけでもちゃんと撮っておきなよと言われて、撮りためていたんですね。それをブログやSNSで公開したら、わりと反響があって。「おもちゃ作家」と名乗り始めたのが7年前で、今は学びや遊びに関する教育関係の仕事もしています。
―― ユニークなひらめきはどのからやってくるのでしょうか。
オン・オフ関係なく、常にうっすらと考えていますね。たとえば、雨上がりの秋の日、息子を保育園に迎えに行った帰りに、モミジの葉っぱが水たまりにいっぱい落ちているのを見つけて。よく見るとどれも、葉っぱの面がペタッと水面にくっついていて、軸が上を向いているんですね。面白いなと思って、とりあえず写真を撮っておいたんです。その応用で、画用紙で雪だるまの小さなおもちゃを作りました。上からひらひら落とすと、スタッ!と立つのがかわいいんですよ。
こんな風に、いつもアイデアの種のようなものを探しながら暮らしていて、蓄積してあります。メモしたりもするんですけど、整理整頓が苦手なので、アイデアの種は家の中のいろんなところにとっちらかってますね(苦笑)。
育児は無理なく
―― おもちゃのレシピ作りで心がけているのはどんなことですか。
ただかわいいだけのおもちゃではなくて、面白みのあるもの、意味のあるもの、発想を広げていけるものを提案したいと思っています。砂時計のワークショップを例に挙げると、砂時計は3分のものが多いんですけど、ワークショップではそれぞれ好きな量の砂を入れてもらうんです。完成したらみんなでカウントして、自分の秒数・分数を書き入れます。自分だけの砂時計作りを通して、時間ってなんだろう、みたいなことを考えるきっかけにしたいなと。
それから、なるべくシンプルな手順、少ない材料で作れるように工夫しています。作り方が複雑すぎてうまくいかないと、嫌になって作るのをやめてしまう子もいますから。
ただ私自身は、失敗しながら試行錯誤を重ねているときが一番楽しくて、自分の力で最適解を導き出すことにこそ快感を覚えるんですね。できれば読者の皆さんにもその楽しさを味わってほしいんですけど、「失敗して試行錯誤する楽しさを実感するためのおもちゃ」はまだ思いつかなくて(苦笑)。レシピ通りに作らなくてもいいので、レシピをヒントに自由に作ってもらえたらうれしいですね。
―― 子どもとの日々を面白がるコツは?
得意な分野で、無理なく楽しむのが一番ですよね。私はたまたま工作が好きだったので、手作りおもちゃを楽しんでますけど、料理なんかはまったくだめで。毎日の献立なんて、火曜日はラーメン、みたいに曜日で決めてるんですよ。
工作が得意じゃないお母さんお父さんは、別に無理して作ってあげなくてもいいと思うんです。育児についても、「まずは育児を楽しもう」みたいなハラスメントがありますよね。でもたぶん、楽しむ楽しまないより前に、普通にやってることをベースにするのがいいと思っていて。私の場合は、もともと好きだったことでちょうど子どもたちが喜んでくれたので、それを一緒に楽しませてもらっている感じですね。
―― 「ふきさんのおもちゃ大百科」シリーズは3作目も予定しているそうですね。
3作目は今のところ「即席おもちゃ」をテーマに、5分で作れるおもちゃや材料ひとつで作れるおもちゃを紹介しようと思っています。簡単なものなら誰でも気軽に作れますからね。楽しみにしていてください。