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見えてきたのは共通するノウハウと学びの意義 藤𠮷豊さん『「勉強法のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』

※「ワテラスブックフェス」は、一般社団法人淡路エリアマネジメントが主催する本のイベントです。東京・神田淡路町の大規模複合施設「WATERRAS(ワテラス)」では、毎年、多様な本の作者をお招きしたトークイベントを実施しています。

 藤𠮷豊さんは、小川真理子さんとの共著『「勉強法のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』の執筆で、個性的な著者の主張を読み込みつつ、徹底して客観性にこだわりました。同時に、大量の関連本を読んだからこそ、「なぜ勉強するのか」も見えてきたそうです。藤𠮷さんが、ワテラススチューデントハウスの学生であり、慶応義塾大学法学部で法科大学院への進学と司法試験の勉強に励む大木咲貴子さん、東京大学経済学部で公認会計士を目指す秋月孝太さんの実体験を交えながら、「勉強法」の世界をひもときます。

トークの動画はこちら

「共通点」を洗い出せば誰にでも役に立つ

秋月:『勉強法のベストセラー100冊のポイントを1冊にまとめてみた』についてご紹介いただけますでしょうか?

藤𠮷:「あるジャンルのベストセラーを100冊集めて、そのエッセンスを1冊にまとめてみる」というシリーズの第3弾になります。第1弾は文章術、第2弾が話し方、そして今回の第3弾では、勉強法を取り上げることにしました。
 大学教授であるとか、塾や予備校の講師、セミナー講師、ジャーナリスト、それから高学歴のタレント、こういったいわゆる勉強に精通している人たちが共通して身につけている、本当に大事なポイントを1冊にまとめてみようというのが、今回のコンセプトになっています。
 勉強法の本ってたくさんありますよね。どれを読んでいいかわからない。確かに、100冊読んでみて、著者の独自性が非常に色濃く出ていることがわかりました。世界観や独自の考え方、ノウハウが書かれているんですが、「唯一無二」かというとそうでもなくて、勉強の基本的に大切な部分には、たくさん共通点があったんですよね。だとすれば、その共通点だけを洗い出して正確に分析して紹介をすれば、誰にとっても役に立つ。
 勉強の入り口に、どの本を読んでいいかわからない、どんな勉強法が自分に合うかわからないといった悩みを解消するヒントになるんじゃないかなと考えています。

大木:私も今まで何冊か勉強法の本を読んだことがあるのですが、その中でも本書は本当にわかりやすくて、まるで勉強法の参考書のようだなと思います。

藤𠮷:ありがとうございます。うれしいです。

大木:勉強法がランキング形式でまとめられているので、重要なポイントがとても頭に入ってきやすかったです。
 勉強そのもののやり方だけではなく、運動や食事といった面にも触れられていて、勉強の効率を上げるための方法が、誰にとっても取り入れやすいなと思いました。

秋月:僕自身は、小中高校生ぐらいまでは自分で試行錯誤しながら独学で勉強法を確立して、大学に入ってから勉強法の本があるんだと知りました。自分なりの勉強法を確立している中で、この本を読んでみて、(上から目線で)ちょっと失礼な言い方に当たるかもしれませんが、「隙がないな」と思いまして。

大学生の秋月孝太さん

藤𠮷:おお。褒め言葉だと解釈しておきます。

秋月:僕がいろいろ考えてきたものを、藤𠮷さんの腕によってこの中に凝縮されているなと。最短ルートとして、このような本があるのはとてもありがたいなと思いました。

「勉強法」を取り上げた三つの理由

秋月:シリーズとして、文章術と話し方の後に、勉強法を取り上げようと思ったのはなぜなのでしょう。

藤𠮷:大きく理由が三つあるんですね。一つは受験を控えている方、資格試験やテストを控えている方の応援をしたい、役に立つ本を出したいというところが一つ。
 二つ目は、社会人を中心に学び直しが広がっているということ。新型コロナウイルス感染症が蔓延したことによって、働き方がずいぶん変わってきました。その変化に対応するためには、新しいスキルや新しい知識を身につける必要があるのではないかという意欲が高まってきていると感じたんですね。
 三つ目は、今の時代って、自分の頭で考えることがとっても重要になってきていると思ったからなんです。
 真偽のわからないニュースがたくさんありますよね。それから、社会的にも賛否が分かれるような問題がたくさんあります。情報も溢れていて、どれが正しいのかがなかなか判断できない、誰に意見を聞きに行っていいのかわからないという中で、最終的に自分の頭で考えるということが非常に大事になってくると考えたんです。
 でも、自分の頭で考えるためには、考えるための判断材料が必要ですよね。僕と共著者の小川真理子は、勉強して知識を得ることは、その判断の材料を蓄えることなんじゃないかと考えました。
 大木さんは今、司法試験の勉強をしてらっしゃいますよね。例えば憲法や法律の条文を学んでインプットして、知識として蓄えるからこそ、目の前で起きている出来事が合憲なのか違憲なのか、量刑としてどれくらいが適切なのか、という判断ができる。
 それと同じで、勉強して知識を深めていく、広めていくことによって、いろいろな角度から今起きている出来事を見られるようになって、100%正しいと言えるかどうかわからないけれど、自分なりに腑に落ちた、納得できる答えを導き出せるんじゃないかなという気がしています。

ランキング作りで客観性にこだわった

藤𠮷:ランキングをどうつけたか、簡単に説明します。勉強法に関する本はたくさんありまして、おそらく数百冊をリストアップしているんですね。その中から、150冊購入しました。150冊を僕と小川でもう一度見直して、読んだのが103冊です。
 103冊の本に、どんなノウハウが書かれているのかを、付箋を貼ってチェックしていく。1冊読み終わったら付箋のページをもう一度開き直して、書かれているノウハウを全部打ち込んでいくんです。例えば1冊に20のノウハウがあったとすると、100冊で2000のノウハウがあるわけですよね。それを全て書き出した後に、表計算ソフトを使って、これとこれは同じだよねとか、微妙に違うかなとか、グループ分けしてもいいよねという精査を何度も行い、時間をかけて1位から40位までランキングをつけていきました。
 1位は、「繰り返し復習をしよう」というノウハウで、これは100冊中50冊以上に書かれていました。40位のノウハウはそれほど多くの方に書かれてはいないんですけれど、著者にとっては実際に結果の出たノウハウです。なので、1冊しか書かれていないからだめで、50冊書かれてあるノウハウが優れているということでは決してないと思っています。

大木:本に付箋を貼ってまとめて、という作業がとても大変そうですね。

藤𠮷:とても大変でした。

大学生の大木咲貴子さん

大木:大体どれぐらいの期間で執筆されたんですか。

藤𠮷:半年以上かかっていると思います。まず、100冊の本を読むってどうですか?

大木:大変ですし、一気に100冊となったら本当にパンクしそうですよね。

藤𠮷:1冊の本を読むのに、大体どれくらいかかりますか?

秋月:僕は速読ができないたちなので、集中して読んだとしても2~3日でしょうか。大学の授業などがあれば、1週間なんて平気でかかってしまいます。

藤𠮷:仮に、1冊に2日かかったとすれば、100冊あると読むだけで200日かかるということになりますよね。それだけ時間がかかるため、ランキングを確定させるまでの作業が大変でした。
 でも、そこで手を抜いてしまうと、客観性が保てなくなるんですよね。このシリーズでは、文章術、話し方、勉強法と、僕と小川の主観的な考えはどこにも入っていないんです。文章術に関して言えば、僕はライターであり編集者であり、出版業界で長く仕事をしているので、僕自身のノウハウもあるのですが、一切どこにも書いていません。
 なぜ書かなかったのかというと、「僕にとっては大切なノウハウかもしれないけれど、多くの人が真似できるか、多くの人に役に立つかどうかはわからない」からです。
 だとすれば、文章の達人と言われている人たちの多くが大切だよと言うノウハウを紹介した方が、おそらく一般的で、汎用性、再現性が高いのではないかと考えました。
 特に、勉強というカテゴリーにおいては、僕には何の実績もないんです。受講生を何百人も請け負っている、といった数字で話せるような実績がない。でも、だからこそ、これから勉強しようという方と同じ目線で勉強の本に向き合えました。勉強のプロではない僕たちが、それでも勉強法の本を出せたのは、客観的にその情報と向き合って正確に数を数えていった結果だと思っています。

大木:私も読んで感じたんですけれども、徹底的に客観的な視点から書かれているからこそ、誰もが真似しやすいです。以前違う方の勉強法を読んだときは、著者の経歴がすごすぎて、言ってることはすごいけど自分で真似できるのかと思うことが多々ありました。ランキング形式で多くの方が言っていることをまとめてくださったので、ありがたかったです。

100冊を読んで感じた勉強の意義

秋月:100冊を読まれる中で、根本的に対立しているような主張はありましたか。

藤𠮷:「根本的に」という意味では、対立はなかったと思っています。具体的な方法に関しては意見がわかれるところもあったんですね。例えば、音読がいいよという著者もいれば、いや音読はしなくてもいいよという著者もいました。「勉強は時間ではなくノルマで考えるんだ」ということで、「ノルマがこなせないなら寝ないでもやれ」という著者もいました。一方で、「ちゃんと寝なさい」という著者もいるわけですよね。
 細かい手法に関しては、個人の向き不向きや得意不得意もあるので、意見が違うこともたくさんありましたが、根本的な部分では「違いはない」と僕は思っています。
 勉強は大切である、勉強はした方がいいという思いを100人全員が持っているからこそ、勉強法の本を出すわけですよね。100冊全てにおいて、「勉強は大切である」という根本的な意見は同じだったと思っています。
 では、なぜ勉強が大切なのか。「広げる」「広がる」というのが、僕が100冊から読み取ったキーワードでした。
 できることが広がる。知識の幅が広がる。見方が広がる、選択肢が広がる、可能性が広がる。それから、仲間と一緒に勉強することで人間関係も広がっていきますよね。知識を広げていく、できることを広げていくことによって、物事を正しく見られるようになっていく、自分の頭で考えられるようになっていく。広げる、広がるために勉強するのが大事なのかなというのが100冊を読み終えた僕の感想です。

大木:勉強というと、どうしても試験のためとか、そういったものに目が行きがちなんですけど、その広げるとか広がるといった視点を持つと本当に勉強の意義が感じられそうですよね。

藤𠮷:点数とか成績で表されるものだけが勉強ではなくて、本を読んだり誰かと会って話をしたり、どこかに行って目の前で起きている現実を見てみるということも全て勉強だと思いますね。
 そういうふうに捉えると勉強はたくさんあるわけで、それを意識して見るか見ないかということによって、自分の成長の度合いも変わってくるのかな、なんて思ったりしています。

秋月:勉強という言葉に対して、机の上でペンとノートでやるということにあまり凝り固まりすぎない方が、生きていて楽しくなりそうですよね。新しいものがどんどん吸収される喜びを感じられるのがいいのかなと思います。

藤𠮷:勉強というと、ちょっと堅苦しい感じもしますけど、例えば「学び」とか、少し言葉を変えるだけでもイメージが変わってくる。たくさんのことが、自分にとっての学びであると捉えると、そんなに息苦しくもないのかなという気がします。

動画本編では、記事中で紹介しきれなかったトークが楽しめます。藤𠮷さんが印象に残った勉強の大切なルールや、現役大学生である秋月さん、大木さんの勉強法にも話題が及びます。