お坊さんたちがつくるフリーペーパー「フリースタイルな僧侶たち」。宗派を超えて若手僧侶らが「同世代に仏教を届けたい」と創刊し、今年で15周年を迎えた。編集長の世代交代を重ね、今も若者の手にとってもらおうと模索を続けている。
京都市下京区の龍岸寺で10月上旬、歴代代表・編集長のトークイベントが開かれた。初代代表・編集長だった浄土宗の池口龍法さん(44)が住職を務める寺で、フリスタのファンら約50人が集まった。
創刊時の池口さんは28歳。「宗派を超える活動がまだタブーだったころ。ネットが普及してつながれる時代に、自分たちの好きなものを同世代に伝えない手はないなって」と思いを語った。
自殺や貧困の問題に取り組む若手僧侶たちを特集する一方、海外の寺院や精進料理のレシピも紹介。硬軟交えた企画が注目され、やがて発行部数は1万部を超えた。
2015年4月の34号から浄土真宗本願寺派の若林唯人(ただと)さん(42)にバトンタッチ。仏の教えを正面に据える企画などを手がけつつも、締め切りには苦しんだそうだ。代表としての事務は真言宗御室派の加賀俊裕(しゅんゆう)さん(38)が担う体制になった。
20年12月の58号から浄土宗の稲田ズイキさん(32)が編集長に。広告会社で働いた経験も生かして誌面を刷新。仏教とは関係のない日常のなかで「その言葉は実は元々お釈迦さまが言ってるんじゃないの」と感じるやりとりに注目した。
58号の特集は「本気で地獄」。SNSにあふれる「○○は地獄」などのつぶやきから、若者にとっての現代の地獄を考察する内容だった。
今年6月に出た63号を最後に、真宗興正派の秦正顕(はたまさあき)さん(30)が新たに代表・編集長に就任した。まずは「ゆったりした雰囲気にフリスタのロゴを変えたい」そうだ。一方、「悩み苦しみにどう向き合うか。それは編集から絶対に外したくない」とも言う。ロゴは変えても、社会問題や若者の心に寄り添ってきたスタイルは変えない――。新編集長の決意表明を聞いた。(竹田真志夫)=朝日新聞2024年10月30日掲載
<フリースタイルな僧侶たち> 通称フリスタ。2009年8月に創刊。当初は隔月で、現在は年2回発行する。全国の有志の寺院やカフェなどで無料配布。バックナンバーや配布場所はホームページで。