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「よみがえったラッコ」書評 絶滅寸前から復活果たす逞しさ

評者: 田島木綿子 / 朝⽇新聞掲載:2026年09月26日
よみがえったラッコ: 海に浮かぶ小さなけもの 著者:服部 薫 出版社:東京大学出版会 ジャンル:科学・テクノロジー

ISBN: 9784130639705
発売⽇: 2026/06/25
サイズ: 18.8×2cm/176p

「よみがえったラッコ」 [著]服部薫

 水族館で人気者のラッコだが、近年では日本周辺の海にも野生個体が生息していることが紹介されている。生物学的特徴や分類、ヒトに利用されてきた乱獲の歴史、その結果の絶滅寸前から復活した逞(たくま)しさも惜しみなく紹介されており、私を含むラッコ好きにはたまらない一冊であろう。
 愛くるしい見た目とは裏腹に、動物が主食の食肉目に分類される。シェパードほどの大きさを誇り、大好物のウニや貝類をバリバリ食べる様子は同じ食肉目のライオンを彷彿(ほうふつ)させる。
 アザラシやトドと違い皮下脂肪が薄いため、動物界一の密度を誇る毛と皮膚の間に空気を捉えて体温を保持し、浮力を確保する。向きによっては逆立つアザラシの毛と違い、ラッコの毛は流れの向きがなく、上下左右に自由自在になでつけられる。同じ海棲(かいせい)哺乳類でも一括(ひとくく)りにすることなかれ、生き様に見合う特徴を備えているのだ。ラッコの毛皮は重宝され、日本では史料から室町時代には利用が確認できるとは驚きである。
 ラッコといえば生態学の教科書でも取り上げられるキーストーン種だ。比較的少ない生物量にもかかわらず生態系に大きな影響を与える生物のことである。ジャイアントケルプなどの海藻群落はラッコの住処(すみか)であると同時にウニの食べ物でもあり、その行く末はウニを食べるラッコの個体数に左右されるのである。
 保護条約を機にした絶滅の淵からの見事な復活劇には感嘆するばかり。米国カリフォルニアからアラスカ、ロシアのコマンダー諸島、北海道にかけての海に3亜種(カリフォルニアラッコ、アラスカラッコ、アジアラッコ)が今も生息していることは喜ばしいことであり、人間社会の歴史的反省点も浮き彫りになっている。
 北海道では野生のラッコの親子が見られる場所もある。今度こそ彼らと共存することを念頭に置きながら、見に出かけるのも良いかもしれない。
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はっとり・かおる 1974年生まれ。水産資源研究所広域性資源部副部長。編著に『日本の鰭脚(ききゃく)類』など。