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「北斎写真画譜への道のり」書評 一般読者への親切さをもう少し

評者: 横尾忠則 / 朝⽇新聞掲載:2026年10月17日
北斎写真画譜への道のり 著者:鈴木 淳 出版社:ぺりかん社 ジャンル:歴史・地理

ISBN: 9784831517272
発売⽇: 2026/09/24
サイズ: 15.5×21.7cm/240p

「北斎写真画譜への道のり」 [著]鈴木淳

 ●先(ま)ず驚いたのは本書が本紙の書評対象本として選ばれたことです。というのは本書は古風な文体で実に読みにくい学術研究書であること。かつて読んだ北斎のどの本よりも超絶的に難解で、漢語調、論文調の文章構成は現代人の読書愛好家から隔絶した重厚さで、冗長で堅苦しく、かなり取っつきにくい。
 ▲視認性や読解に負荷の高い硬い文章になかなか馴染(なじ)めず、行ったり来たりで一向にページがめくれず、まるでダンテの『神曲』の煉獄(れんごく)と地獄を往還している想(おも)いで、つい題名につられて書評を引き受けてしまった手前、わからないまま難解な観念と文体を追うしかないか、と諦念(ていねん)する次第であります。
 ■題名にある「写真画譜への道のり」はフォトグラフの写真の意ではなく、真を写す、つまり構造、動作、本質を正確に写すという北斎の画法の概念の解析ということであるらしい。
 ●北斎が○△□の図形や骨格を活用して、森羅万象を如何(いか)に合理的に解剖・解析したかという解説が例の難解な文体と語彙(ごい)によって語られるのです。
 ▲それにしても、どうしてこんな読みにくい表現が不可欠であるのか。それが専門書であるために不可欠なのかもしれません。
 ■とにかく読解負荷が高いために全体像を摑(つか)むための根気だけでなく、それ以前の知的教養が不可欠で、この書評を与えられた私の業に苦しめられています。
 ●まあ私の責任もありますが、もう少し欲しい一般読者向けの親切さの欠如はいかがなものでしょうか。似た表現の論理の反復が多いためか、脳の整理とコントロールが機能しがたく、理解できないのは全面的に私の浅学非才によるものですが。
 ▲もう少し勉強して再び本書に挑戦したいと思います。
 ■だってジャポニズムで最も高い評価を受けた北斎絵本ですから。
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すずき・じゅん 1947年生まれ。国文学研究資料館名誉教授(日本古典文芸)。著書に『江戸のみやび』など。