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あたらしい「学び」について考える 紀伊國屋書店員さんのおすすめ

そもそも「学ぶ」ってどういうこと?

 まず1冊目に紹介するのは、松村圭一郎『これからの大学』(春秋社)。わたしたちは日常生活で生じる問題を解決しようとするとき、どのような方法が適切なのか、様々な視点から考え、答えを出そうとします。これは、仕事においても家庭生活においても、必要不可欠な能力です。絶対的に正しいとされるものがないなかで、自分で問いをたて、自分自身で答えを導きだす。著者の松村さんは、学問とは文字通り、「問い方を学ぶ」ものだといいます。

 さらに松村さんは、人類学者であるティム・インゴルドによる「知識」と「知恵」の定義を紹介し、「知恵」を育む機会を与えるのが、大学の役割なのではないかと説きます。「学ぶ」ということから、「教育」について。考えをめぐらせた著者の思考のプロセスをゆっくりとたどるように、じっくりと自分の思考も活性化させながら、読みすすめることができます。

 本書では、自身自身の考えを導きだす過程のなかで、「対話」が重要であるということが何度も強調されているのですが、この本の結びも、「ほぼ日の学校」を運営する河野通和さんとの対話を通したものになっています。これにより、大学の外での「学ぶ」ことについても語られ、より広がりを持ったものになっていると感じました。

「学ぶ」場所をつくる

 続いては、青木真兵・海青子『彼岸の図書館 ぼくたちの「移住」のかたち』(夕書房)。都市での生活で心身のバランスを崩した著者お二人は、「生き延びる」べく移住を決意し、奈良県の東吉野村に移り住みます。自分たちはここで何ができるのか。ともに1980年代生まれであり、西洋史の研究者である真兵さんと、図書館司書である海青子(みあこ)さんは、そこで自宅を私設図書館として開館し、文化的な拠点をつくる「実験」をはじめます。

 効率を強く求める時代の流れのなかで、立ち止まって思考できる場所(図書館)をつくること。これは、そんな流れに乗ることしか生きる方法がないという思いこみに、風穴をあけるような試みであるといえます。

 自分の頭で考えて、自分で理想とする場所をつくっていく。まさにそれを実践されているお二人は、わたしにとって、少し先に見える、ささやかだけれどたしかな光のようにも思えます。

自分のやり方で「学ぶ」

 最後にすすめたいのは荒木優太編著『在野研究ビギナーズ 勝手にはじめる研究生活』(明石書店)。在野研究とは、「ごく簡単に、大学に所属をもたない学問研究」のこと。どこにも属することなく、好きな研究をする。これはひとつの生き方であると思います。

 本書は、現在活躍している(編者を含めた)15人の在野研究者による、体験と実践を集めたもの。学問とは別の、日々の労働に就きながら学術論文を発表する者、研究にとどまらず独自のスタイルであくなき知的探究を続ける者、ときに既存のシステムを利用しながら、様々な人々との協働のなかで研究をおこなう者…。各々のやり方で学問に向かうその熱量に、とにかく圧倒されます。

 情報環境の発達から、いまやどこにいても世界中の文献にアクセスが可能になり、在野研究の可能性もこれまでにないほど広がりをみせています。わたしの勝手なイメージで、在野研究というとなんとなく、一人黙々と人と関わることなく文献にむかっている様子が浮かんでいたのですが……実際は違う! 在野研究者はそれぞれのやり方で、それぞれの「好き」や「楽しい」という純粋な気持ちを大事にしながら、世界との関わり方を模索する実践者なのだと、本書を読んで思い至りました。

 研究者を志す人でなくとも、あたらしい一歩を踏み出したい人にとって、きっと刺激となる一冊になるはず!