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「健康フェイクニュース」が信じられてしまう理由を解説 『なぜ、健康法は「効かない」のか?』

記事:大和書房

『なぜ健康法は「効かない」のか?』(だいわ文庫)
『なぜ健康法は「効かない」のか?』(だいわ文庫)

 情報番組がバナナを取り上げればバナナを、クルミを取り上げればクルミを買いに走る人を見ると、「今度はそれなの? よくこりないね」と思うのに、気づくと自分もバラエティ番組に出てきた別の成分が気になっている、なんてことがありますね。 

 この背景にあるのが、誰の心にもある「指示してほしい」という気持ちです。健康や命にかかわることとなれば誰だって失敗したくありません。でも、それと同時に、「自分でちゃんと調べるのは大変そうだし、自信ないな」と考えてしまいがちです。

 そんなとき、お話が上手で、信頼できる専門家が答えをはっきり示してくれたら、どうでしょう。あれこれ悩んだり、決断したりする必要はなく、そのうえ、責任は指示した人にあるのですから、何か起きても自分はまったく悪くありません。決まった時間にテレビをつければ、そんな頼もしい専門家や有名人がいつもそこにいて、いかにも効きそうな健康法を明快に、わかりやすく説明してくれるのです。

 これは楽でいいですね。ついでにいうと、これが本当の病院であれば、ちゃんと薬を飲んでいるかうるさく聞かれたり、細かく検査して効果があるか調べたり、まるで監視されているようで息が詰まります。でもテレビの先生はテレビの中の人。適当にさぼりながら続けても叱られることはありません。

コロナ禍で拡散した「ある噂」

 こういう視聴者の心理を番組制作者はよくわかっているので、「この成分が体に良いです」で話が終わることはありません。必ず、「だから、これを手のひらに一杯、 毎日食べてください」と、具体的な指示を出し、これをアシスタントが復唱しながら、 用意したフリップを丁寧に見せてくれます。このときには視聴者の大半が手近な紙と鉛筆を握りしめ、画面に向かって身を乗り出していることでしょう。子どものように素直な気持ちで。

 人が専門家の話に耳を傾けるのは生きる知恵でもあります。情報がなかなか入らなかった時代も、情報化社会といわれるこんにちでも、正確な情報を手に入れる方法の一つが情報源を選ぶことだからです。そのなかでもっとも信頼できるのが、その分野の勉強を続け、経験を積んだ専門家の言葉でしょう。

 コロナ禍のなかで、SNSで流れた噂に「新型コロナには日光浴が効く。アイスクリームはよくない」というものがありました。この噂は、いつのまにやら「UNICEF(ユニセフ:国連児童基金)が発表したらしい」と話に尾ひれがついたことで一気に拡散されたそうです。

 問題は、受け身の姿勢に慣れてしまうと冷静な目を失いやすいことと、テレビは研究発表の場ではないため、番組の内容が必ずしも正確ではないことです。

健康情報番組が信用できないワケ

 テレビから流れる情報には、もう一つ気になる点があります。とくに民間放送局は、番組の制作費用を出してくれるスポンサー企業に配慮しながら番組を作っています。スポンサーには食品メーカーも多いため、健康情報番組で特定の成分を取り上げるときは、スポンサーの製品の販売に差しつかえることがないように、製品にとって不利になるような発言をひかえ、製品に含まれる成分の健康効果をことさらに持ち上げることがあります。

 番組収録前に制作者から「事情説明」を受けるのはタレントだけではありません。ゲストとして招かれた専門家も同様です。こうして作られるテレビ番組は、たとえ健康をテーマにしていても、「情報」というより「広告」に近いといえそうです。

 テレビの言葉をそのまま信用するのではなく、信頼できる公的機関のウェブサイトで確認し、メーカーのウェブサイトに気になる点はないか、のぞいてください。

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