受験勉強を乗り切る塾弁・夜食って? 体内時計を保つための科学的な考え方
記事:朝倉書店
記事:朝倉書店
子どもたちは受験勉強で追われることが多いと思われるが、塾の宿題・夜間の静けさなどで、どうしても夜遅くまで起きていることがある。
そこで、ここでは食の観点から受験勉強を考えてみよう。
夜遅いということはどうしても、夜間に光曝露を受けやすく食事時間が後退しやすくなり、その結果体内時計の位相は後退し夜型になる。
したがって、夜食、特にボリュームたっぷりは勧められない。
マウスは夜行性であるので、1日に3食(朝食19時、昼食0時、夕食を7時に与える)のうち、昼食の0時を非活動期のど真ん中の12時にする。
つまり昼食をとらずに夜食をとるという実験を行った。その結果、末梢の体内時計位相は、夜食に引っ張られて、非活動期側にシフトした(1)。
つまり、1日3食のうち、1食でも不適切な時間に摂取すると体内時計は乱れてしまうことを意味している。
この3食のマウスの夕食を22時、23時と遅くすると、末梢の体内時計の位相も後退する。そこで、23時に食べていた食事を2分し、19時に半分、23時に残りの半分を与えたところ、体内時計の位相の後退は解消され、正常の食事パターンの場合に近づいた(1)。
したがって、塾が始まる前に食事をし、塾から帰ってきて残りを食べる習慣は、体内時計のリズムを維持する観点から勧められる(図の〇)。
では、塾弁はというと、ふつうに栄養のバランスが良い食事が良いと思われる。
一方、塾後の食事については考慮する必要がある。
塾後の食事は高カロリーのもの、つまり脂質成分の多いものはエネルギー貯蔵に回るのでよろしくない。
同様に炭水化物が豊富な食事も、糖の消費が少ないので高血糖が続き、それは脂肪に変換され蓄積される。
消化が良く、低カロリーの食事が良いと思われる。また、炭水化物や糖を豊富に含む食物はインスリンの分泌が多い(2)。
インスリンは末梢体内時計をリセットさせる能力が強いので、夜食にこれらを豊富に含む食材を摂取すると、体内時計がリセットされ、位相が後退しやすくなる可能性がある。
すなわち、時間栄養学視点から考えると、肥満と夜型化という2点で、炭水化物が豊富な夜食はやめにしましょう。
カテキンを豊富に含むお茶など、あるいは難消化性デキストリンなどが添加された飲み物などは、糖の吸収を穏やかにするという機能を有している。
先に述べたように夜食は高い血糖値が長く続きやすいので、これらの飲み物を夜食のときに一緒に摂取すると効果的であるかもしれない。
先に述べたように(別項*)、カフェインと体内時計に関しては、強い関連性の研究がある。
人で、夜のカフェイン摂取が体内時計の位相を後退させるという結果を紹介したが*、同時に夜の照明が体内時計を遅らせ、さらに夜の照明下にカフェインを摂取すると、より強力に後退させることから、机上に明かりをつけコーヒーを飲むのは、夜型化を助長させる。
したがってお茶に関して言えば、夜のお茶はデカフェ茶が良いであろう。また、デカフェの日本茶には抗不安・睡眠誘発があるテアニンが含まれているので、気分を落ち着かせるにはよいことである。
(*『子どもの睡眠ガイドブック』pp.13-14.)
細胞実験ではあるが、動物脂肪に豊富に含まれているパルミチン酸が、体内時計に異常を引き起こすこと、またこの異常はω-3の脂肪酸であるEPAやDHAが保護効果を有することが報告されている。
したがって、動物性脂質の過剰摂取は体内時計に負荷がかかる可能性に注意しないといけない。
(柴田重信 早稲田大学先進理工学部電気・情報生命工学科)
参考文献
(1) Kuroda H. et al. : Meal frequency patterns determine the phase of mouse peripheral circadian clocks. Sci Rep, 2:711, 2012.
(2) Itokawa M. et al. : Time-restricted feeding of rapidly digested starches causes stronger entrainment of the liver clock in PER2::LUCIFERASE knock-in mice. Nutr Res, 33(2):109-119, 2013.