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子どもの生を考えることは、人がどのように生きるのかを問うこと 〜少子化時代に子どもの生を考える

記事:朝倉書店

子どもの生を考えることは、人がどのように生きるのかを問うことにつながる。
子どもの生を考えることは、人がどのように生きるのかを問うことにつながる。

子どもは社会の宝であり、そしてまた社会の鏡でもある

 子どもの数が年々減少しているのは、日本だけではなく先進諸国全体の特徴となっており、先進諸国の大半が人口を維持するのに必要な出生率2.0 を割り込む形となっている。

 しかも現在その半数以上が都市に集中し、人口過密化地域と過疎化地域での多様な課題が生じてきている。

 デジタル化やグローバル化をはじめ、子どもを取り巻く社会文化的な環境は大きく変化してきている。子どもは社会の宝であり、そしてまた社会の鏡でもある。

子どもは、外界に自ら関わりながら学び成長していく
子どもは、外界に自ら関わりながら学び成長していく

子供の姿には子どもに関わる人の生活や生き方が反映される

 第2章においては「眠る」ということが論じられている。

 日本の子どもの睡眠時間が世界で一番短いというデータはよく知られるところであるが、それはまた大人、子どもに関わる人の生活や生き方が反映しているということもできるだろう。それはいつからなのか、こうした問いが第2章で問われる。

 そして、第3章で取り上げたように子どもたちは、「見る」「聴く」「探る」「泣く」という行為によって他者と対話し、外界に自ら関わりながら学び成長していく。

 そしてその子ども達を繋ぐためには、第4章で示しているように子どもを取り巻く、さまざまな絆の繋がりが求められている。

 人の環の断絶をどのように繋いでいくのか、そこには対人的な環と同時に社会での政策的な専門家による繋がりや、技術的に見えないものを見えるようにする環によって、より良い子育て環境をつくることが求められよう。

少子化時代に、多様な生物が共生するような持続可能な地球環境をどのようにつくるのか。
少子化時代に、多様な生物が共生するような持続可能な地球環境をどのようにつくるのか。

子どもの生を考えることは、人がどのように生きるのかを問うこと

 本書は、実証的な検証に基づく自然科学、社会科学の研究者たちの執筆によるものである。

 残念ながら人文科学的視点から、子どもの食べる、眠る、遊ぶ権利をいかに保障できているのか、いくべきなのかという価値や哲学的な思索を論じた章は含まれていない。

 だからこそ、読者の皆様それぞれが、少子化時代に、多様な生物が共生するような持続可能な地球環境をどのようにつくるのか、そのために日々の保育や養育の中で何が大事なのかを考えながら、読んでいただけるとよいかもしれない。

 子どもの生を考えることは、人がどのように生きるのかを問うことに繋がり、そしてどのような社会を形成するのかを問うこと、どのように行動するかを問うことにも繋がるだろう。

 日々の保育や子育ての中では、見えないものは、見過ごされ忘れがちであるだろう。そして自明への埋没が生まれる。

 しかしその中で本書との出会いが、すでに自明になっている日々の営みや人が行っている営みの持つ意味を改めて考えたり、それらを見つめたりするための眼差しを持つ1つのきっかけになったら幸いである。

 本書の問いは、ネバーエンディングであり、オープンな問いである。

 ぜひその対話の環に読者の皆様も加わってくださったら、監修の役目をもつ者としてうれしく思う。

日々の保育や子育ての中では、見えないものは、見過ごされ忘れがちになっていく。
日々の保育や子育ての中では、見えないものは、見過ごされ忘れがちになっていく。

【目次】

序  【秋田 喜代美】
第1章 食べる 
 1.1 保育における子どもの食【淀川 裕美】
 1.2 家庭における子どもの食【野澤 祥子】
 1.3 子どもの食物【川村 美笑子】
 1.4 腸から脳へ【多賀 厳太郎】
第2章 眠る
 2.1 睡眠を育む【有竹 清夏】
 2.2 睡眠と環境【太田 英伸】
 2.3 睡眠の始まり【佐治 量哉】
 2.4 子どもとかかわる人の睡眠【東郷 史治】
第3章 遊ぶ
 3.1 見る【高橋 翠】
 3.2 聴く【針生 悦子】
 3.3 探る【渡辺 はま】
 3.4 泣く【新屋 裕太】
第4章 繋がる
 4.1 遊びから学びへ繋げる【関 智弘】
 4.2 対話で繋がる【天野 美和子】
 4.3 技術で繋がる【山﨑 俊彦】
 4.4 政策で繋がる【村上 祐介】
 4.5 「ジョイントネス」と「アタッチメント」:他者と繋がる中で拓かれる初期発達【遠藤 利彦】

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