いっぱい遊んだ子どもは賢くなる?ー非認知能力と認知能力
記事:朝倉書店
記事:朝倉書店
子どもはどのように育てるとよいだろうか。できるだけ早い時期から読み書き、計算、英語や運動などを教えるとよいのだろうか。実は、いくつかの研究でその答えが明らかになっている。
「一斉保育」「自由保育」の2つの保育形態下の子どもたちの語彙力、運動能力を比較した研究がある。いずれも結果は、自由保育の子どものほうが高い能力を示した。
意欲をもって主体的に自分から取り組み、達成感を得られることが、より良い学び(成長)につながるのである。
認知能力(認知的スキル)とは、知識、計算力、思考力などのいわゆる「学力」。
非認知能力(社会情動的スキル)とは、「目標達成(忍耐力、自己抑制、目標への情熱)」、「他者との協働(社交性、敬意、思いやり)」、「情動の制御(自尊心、楽観性、自信)」などの力。
非認知能力を幼児期に育てていくことが、小学校以降の学校教育だけではなく、人生に
おいて非常に重要であることが明らかになっている。
『幼稚園教育要領』(文部科学省、2018)にはこのように書かれている:
子どもにとって遊びは学習であり、保育者にとっては指導の手段でもある。しかも、子どもにとっては主体的なものでなくてはならない。
『幼稚園教育要領』や『保育所保育方針』では「育みたい資質・能力」の三点目として「学びに向かう力、人間性」(=非認知能力)が掲げられている。
保育・幼児教育では小学校の授業内容を先取りする準備教育ではなく、「遊び」を通して培われる「学びに向かう力」という土台づくりをして、小学校にバトンを渡している。
このようにそれぞれの時期に適した教育のありかたを理解することで、円滑なカリキュラム接続が達成できる。
大人のアイデアに子どもの興味を惹きつけて集中させるための工夫をするのではなく、子どもの興味・関心を逃さないよう、子どもをよくみつめ、子どものつぶやきに耳を傾けることが保育者の役割である。
本書では,教育心理学が扱う人生のさまざまな問題について、教育・保育の現場に携わる執筆者が実例をもとにコラムを書いています。
これらを参考に、読者の方々も自分なりの答えを考えてみてください。
(コラム「みんなで考えよう!」より)
第1部 若いからできること 歳を重ねるからこそ輝くこと
第1章 人生って何だろう?-生涯発達からみた「今の自分」-
1.1 人は生涯にわたって発達する
1.2 生涯にわたって発達していくために大切なこと
1.3 発達の連続性をふまえた保育・教育の担い手となるために
第2部 ひとりよりもみんなでいることのほうが幸せか?
第2章 人がともに生きるとは?-人間関係とコミュニケーションの発達-
2.1 赤ちゃんは世界とどう出会うか
2.2 アタッチメント
2.3 気質
2.4 パーソナリティ
2.5 非言語コミュニケーションと言語コミュニケーション
2.6 向社会的行動
2.7 攻撃行動
2.8 いざこざといじめ
2.9 子育て支援第3章 メディアとともに生きるとは?-メディアからの学びを考える-
3.1 子どもの育ちと「メディア」
3.2 現代の多様なメディアによる協同活動
3.3 現代社会のメディア環境における子どもの発達・学習
第3部 なぜ学校に行くの?
第4章 いっぱい遊んだ子どもは賢くなる?-非認知能力と認知能力-
4.1 遊びが大事?
4.2 遊びとは?
4.3 保育・幼児教育における遊び
4.4 非認知能力
4.5 協同的な活動第5章 学習することで世界は変わるか?-発達に応じた学習と思考・知能の発達-
5.1 学習の理論
5.2 学習と記憶
5.3 知能と学力
5.4 非定型発達
5.5 おわりに-学習することで世界は変わるか?-
第6章 「やる気」を引き出す魔法-動機づけがもたらすもの-
6.1 子どもの育ちに大切な動機づけとは?
6.2 期待・価値と動機づけ
6.3 興味と動機づけ
6.4 自律性と動機づけ
6.5 不適応につながる動機づけ
第4部 誰よりも幸せになる方法?
第7章 幸せはすでにあなたの手の中に?-認知と感情の発達がもたらすもの-
7.1 赤ちゃんの感じる世界
7.2 「私」ってなんだろう
7.3 他者について知ることと,ともに生きる世界第8章 「私,ほめられて成長しますので」-叱ってはいけない? 真の「ほめる」とは-
8.1 社会の中で学習する仕組み
8.2 ほめるべきか,叱るべきか
8.3 発達・成長を支える-ほめる・叱るを越えて-