知っているようで意外と知らない栄養素 ー健康の維持・増進に重要な「ビタミン」とは?
記事:朝倉書店
記事:朝倉書店
“レモン○個分のビタミンC”や“ビタミンカラー”といった表現があるくらいですから、ビタミンは私たちにとってごく身近な存在のように思えますが、知っているようで意外と知らない栄養素なのではないでしょうか。ビタミンはヒトの健康維持に必要な微量栄養素のうち、体内でほとんど生成されないものの総称で、しばしば潤滑油にたとえられます。現在13種類が知られており、それぞれがヒトの体内で重要な役割を担っています。
本書は『ビタミンの事典』(1996)、『ビタミン総合事典』(2010)の後継として企画されました。後者ではビタミン13種に加えてビタミンに準ずる微量栄養素も取り上げていますが、近年これらが“バイオファクター”として認知されつつあることを受け、今回は本文だけでなく書名にも含めることになりました。実際のところ、バイオファクターと聞いてもまだピンとこない人が多いかと思いますが、たとえばポリフェノール、コエンザイムQなどが該当します。
また、近年さまざまな疾患・病態において複数のビタミンの関与が明らかになっています。そこで今回の改訂では単なる情報のアップデートにとどまらず、「ビタミン・バイオファクターの臨床」の章を新設し、主な疾病別にその病態や治療・予防におけるビタミン・バイオファクターの役割を横断的に解説しています。もちろん最新の食事摂取基準(2020年版)にも対応しています。
(前略)欠乏症の研究から発見がなされたことに端を発し、ビタミンの研究は、栄養学、生化学、分子生物学にとどまらず、医学や薬学など多岐多様にわたって幅広く行われ、いまなお新しい発見がなされています。2020年におきた新型コロナウイルス感染の世界的パンデミックの際には、ビタミンの免疫機能に多くの関心が寄せられたことは記憶に新しいところですが、ビタミン研究の成果は、学問の発展はもとより、人々の健康増進や疾病の予防にも大いに役立っています。
先進国の中でも日本は、超スピードで高齢化社会を迎え、男女ともに「平均寿命」が長い世界有数の国になっています。しかし最近では、健康で元気に過ごすことができる「健康寿命」と「平均寿命」との差が開きつつある傾向がみられ、今後は「健康寿命」をいかに長くするかがより重要な課題となってきます。また、近年「フレイル(健康な状態と要介護状態の中間に位置する状態)」という概念が注目されており、高齢者のフレイル予防は、医療費の削減に役立つものと期待されています。
これら健康寿命の延伸とフレイル予防を達成するために重要なことの1つとして、「正しい食生活をする」ことが挙げられています。炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミンおよびミネラルといった五大栄養素に加えてバイオファクター(生命活動に必須な微量生体物質―ビタミン様物質)をバランスよく摂取することがますます重要になってきています。(中略)
本書は、ビタミンやバイオファクターに関する基礎となる重要な項目だけでなく臨床応用や最先端のトピックスも多く含まれています。ビタミンやバイオファクターの研究を始めようとする学生や若手研究者にとって大いに役立つ内容となっています。また、ビタミンやバイオファクターの生理作用を活かした機能性食品やサプリメントの開発をしたいと考えている他分野の研究者にも十分に役立つ内容となっています。本書が広く活用され、人々の健康とその増進、更には疾病予防に大きく寄与することを期待します。
「発刊によせて」より 日本ビタミン学会会長 和田昭盛 (※役職は刊行時)
会長の和田先生(※役職は刊行時)が「発刊によせて」で書いていらっしゃるように、世界的にみても急速に高齢化が進む日本において、フレイルを予防し健康寿命を延ばすことは喫緊の課題です。さらに今回の新型コロナウイルス感染症をきっかけに、幅広い層で栄養バランスや健康への関心が高まっているという調査結果もあるようです。本書が人々の健康増進と疾病予防に活用され、またビタミン研究のさらなる進展に貢献できればと期待します。