子をもうけるための性行為がなくなる未来 『人がセックスをやめるとき』
記事:東京化学同人
記事:東京化学同人
本書『人がセックスをやめるとき』は、人類の未来について考える書です。革新的なバイオ技術がもたらす生殖医療の発展と、その結果として私たちが直面するであろう深遠な倫理的および法的な問題を議論するものであり、その中で、やがてくる「セックスの廃れ」というテーマについても論じています。
しかしながら、本書が意味するのは、「セックス」という言葉がもつすべての意味合いがなくなるということではありません。現代でも、人々は、自らの意思で性行為を継続することができますし、自然な方法で誕生した子どもたちは、変わらず人々に歓迎されます。それでも、iPS細胞やゲノム編集などの技術が進歩すれば、将来の親たちは、子どものDNAについて100くらいの胚の中から、好みの特徴を備えたものを自由に選ぶことは技術的に可能になるでしょう。そして、安全で合法に選択した胚を使って、クリニックで人工的に子どもをもうけるような社会が実際に訪れるかもしれません。
このような未来が来る前に、私たちはiPS細胞やゲノム編集技術が各方面にもたらす影響を正確に理解しておく必要があるでしょう。技術の進歩がもたらす経済的、法的、政治的な側面も踏まえ、人間としての尊厳や道徳的な問題について掘り下げて議論しておく必要があります。本書は、これまでにない視点から人類の生殖の未来を考える一冊であり、著者は、これらのテーマについて一つひとつ丁寧に説明し、読者を深い洞察へと導いてくれます。
人間が新しい方法で人間をつくりだすことができるようになるのは時間の問題です。その未来を積極的に選ぶのか、あるいは何らかの制限を設けるのか、それは私たちの判断にかかっています。本書を読んで人類の生殖の未来について考えてみませんか。