いやな体臭の代表格、「汗臭さ」の原因を知って対策をしよう!
記事:朝倉書店
記事:朝倉書店
●汗はどこから出るのか
汗のにおい(汗放置臭)は、最も代表的な体臭の一つである。ヒトの皮膚表面には、化学物質を分泌するエクリン汗腺、アポクリン汗腺、皮脂腺がある。この中で、汗を分泌するのはエクリン汗腺とアポクリン汗腺であり、ここではエクリン汗腺に関連し、汗をかいて放置した時に生じる汗臭について述べる。
汗腺は常に働いているわけではなく、活動している「能動汗腺」と、活動していない「休眠汗腺」がある。生まれたての赤ちゃんは、出生後3~5日後に手掌部と足底部以外から発汗できるようになり、手掌部と足底部は1~3か月後に発汗できるようになる(菅屋 2017)。
●サラサラの汗とベトベトの汗
皮膚常在菌は「ベトベトした汗」を好む。汗は血液の血漿が原料となる。体温が上昇すると、血液の成分が汗腺に取り込まれる。ただしこの時、ナトリウムイオンなどの塩分は体にとって必要な栄養素なので、濾過されて血液に再吸収される。その結果、水分とわずかなミネラル分を含むサラサラの汗となる。少量の塩分しか含まないサラサラした汗は蒸発しやすく、皮膚に残る塩分量も少ない。しかし、大量に汗をかくと、再吸収が追いつかなくなり、汗の量が増すにつれて次第にベトベトした汗になる。塩分濃度の高いベトベトした汗は乾きにくいため、皮膚表面や頭髪、あるいは衣服に長時間残留する。通常汗は弱酸性であるが、汗の量が増えると酸を中和する炭酸水素イオン(HCO3-)も再吸収されにくくなり、排出された直後の汗は塩基性に傾くことがある。ただし、皮膚表面には皮脂から生成する遊離脂肪酸も存在することから、皮膚表面の汗のpHを測定しても塩基性を示すことはまずないが、通常のpH約5よりは塩基性側に傾くことがある。皮膚常在菌はこのような環境を好む傾向があり、皮膚常在菌の活動や繁殖が盛んになり、汗中成分の分解が助長され、汗臭が強くなる。
●汗が少ない人の汗は臭い?
ベトベト汗になるもう一つの要因として、休眠汗腺がある。もともと働く能力のある能動汗腺も、冬の寒い時期や普段から汗をかく習慣がない人の場合、一時的に休眠してしまうことがある。夏でもエアーコンディショナー(エアコン)の利いた部屋に長くいると、一時的な休眠汗腺の割合が増えてしまう。このような状態で、急に激しく動く、あるいは暑い場所に出た時は、一部の能動汗腺からまとめて汗が出るため、ナトリウムイオンなどの塩分を多く含んだ「ベトベト汗」になってしまう。冬の間、汗をかくことが少ない人はベトベト汗になりやすく、春先は汗臭の要注意時期である。また春は新しい生活がスタートする時期であり、新しい環境に対して緊張や不安を覚えると交感神経が優位になり、精神性発汗が生じることがある。このような状況では、アンモニアによる疲労臭も発生しやすくなる。
汗臭の対策としては次のものがある。
①汗はウェットなもので拭く
②汗腺を衰えさせない(日頃から汗をかく習慣を身につける)
③制汗剤を使う(ただし、発汗は体を正常に保つ大事な機能なので、使いすぎには留意したい)
④香水を使う(スパイシーな香り、森林調の香りなど、ミドルノートのしっかりとした香り)