中国に返還されたパンダに会いに行く! 『はなと毎日パンダの 中国パンダ旅 ~雅安・西安篇~』(白水社)
記事:白水社

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はな: パンダフルな6日間の旅、いろいろな発見がありましたね。高氏さんは、パンダに会いに中国に行ったのは今回で何回目ですか?
高氏: 4回目です。
はな: 今回の旅では何が一番印象的でしたか?
高氏: シャンシャンが雅安の環境にだいぶ馴染んできて、もう自分の城みたいに過ごしていたことですね。
はな: 本当に。私は今回が2回目なんですけど、シャンシャンが音に驚かなくなったと思いました。2023 年 10 月に行った時はシャンシャンが音にすごく敏感で、ニンジンを載せたトラックが通るだけで山に帰って行ってしまったのが、今回はトラックが通っても全然びくともしなくて、こんなふうに順応していくんだなって、感慨深かったです。
高氏: 音には慣れてきてるのと、あと、1日の生活リズムが定着して、食べる時間の後は寝る時間、というふうに規則的に過ごせていると思います。
はな: それと今回、1日目は女性の飼育員さんで、2日目は男性の飼育員さんだったけど、2日目の飼育員さんの呼びかけになかなか反応しなかったのは、おりんごが用意されてなかったからだなと思って(笑)。
高氏: うんうん。
はな: 飼育員さんが代わっても、ちゃんと自分の意思で、というのがあるんですよね。
高氏: 自分の願望をちゃんとアピールできてるんでしょうね。
はな: 私たちが会いに行ったのが、シンシンとリーリーが中国に帰って一般公開された最初の日と重なったことが奇跡でしたよね。
高氏: いや本当にまさかのドンピシャでしたね。
はな: その日から公開されるというニュースが入っても、実際にパンダ基地に行ってその姿を目にするまでは本当に公開されるかどうか、わからなかった。ドキドキ感いっぱいの旅でしたね。
高氏: 行ってみないとわからないことがいっぱいありましたね。
はな: 高氏さんはシンシンに会ったとき、目が合っていましたよね。シンシンが高氏さんに近づいてきて。
高氏: 上野でもあんなにバッチリ目が合ったことはなかったし。こんなに近くに来てくれて、私たちのことを見回して確認してくれているような感じだったので。存在を意識してもらえただけでも十分に幸せです。
はな: 黒い集団を見て私たちのことを思い出したのかな。
高氏: 絶対に何かしら感じていたでしょうね。
はな: そうよね。しかもみんなで「シンシン」って呼びかけたら、お耳がピクピクしたのは、きっと伝わったのかなと。
高氏: 自分がシンシンだってことはわかっているから、ちゃんと反応してくれましたね。
はな: そのとき、高氏さんがバレリーナみたいにめいっぱい背伸びして手を伸ばしてガラスの上の方からシンシンの写真を撮っていましたよね。その姿が面白かったです。
雅安では写真を撮っている方が多くて、シャンシャンがまだ外に出ていても、シンシンのところに行ってまた戻ってくることもできる。行ったり来たりできる距離感がいいですよね。
高氏: そうなんですよね。写真を撮っていると場所を譲ってくれる方も多いですよね。
はな: そうそう。写真を撮るために小さな台を置いている方が、それを使っていいよと言ってくれて。パンダファンは親切な方ばかりですね。道ですれ違う時も挨拶は必ずするし、「シャンシャン今起きてるよ」と様子を教えてくれたり。
高氏: ゆっくり見られるという心の余裕があるからかもしれませんね。
はな: 中国に帰っちゃうことが決まって、遠いところに行っちゃうって思ってたけど、実際に中国のパンダ基地に行くと、日本にいた時よりパンダとの距離が近く感じられてうれしいですよね。
高氏: めっちゃ近いですよね。
はな: 特にシャンシャンがハイタッチしてくれたのにはびっくりしました。あの子は本当にファンサができる子だなとあらためて実感しましたね。ほかにも、見えなくなったと思ったらひょっこり顔を見せてくれたり、もう帰っちゃうかなと思ったらでんぐり返ししてくれたりね。ちゃん と私たちを楽しませてくれる。シャンシャン、できる子だなって。
ハイタッチしてくれたり、あんなに近くに寄ってきてくれたり、日本でそういうのはなかったから。今の雅安のパンダ基地でしか味わえない楽しみ方だと思いましたね。
高氏: 私も上野ではシャンシャンとハイタッチしたことは一度もなかったです。雅安のパンダ基地ならではですよね。
はな: シャンシャンの隣の部屋にお母さんのシンシンが引っ越してきてから、シャンシャンはシンシンの部屋のほうを向いてうつぶせで寝ていたり、耳を澄ませていたりしていましたよね。あれは、シンシンが隣にいることに気づいていたんでしょうかね?
高氏: やっぱり何かしらの変化には気づいてたんでしょうね。シンシンの部屋の方を向いて寝ているなんてことは、今まできっとなかったはずなので。普段と違う何かが隣で起こっていると。声とか何かで感じるものがあったんですかね?
はな: パンダは嗅覚が優れているそうなので、匂いでわかるのかな?
高氏: 匂いでわかったらいいなって思いますが、実際はどうなんだろう? リーリーは、今回は小さくしか見えなかったけど、とんがり頭が(笑)。もうあれがリーリーのすべて。
はな: ちょっとだけ見えているとんがり頭だけでみんなが気づいて「リーリーよ!」と声をかけていたのが最高によかった。
高氏: あんな再会はリーリーしかできない(笑)。
はな: リーリーがみんなに愛されている証拠だなと思いました。リーリーは頭しか見せてくれませんでしたが、上野の3頭が揃ったのはあの一瞬だけだったから、そういう意味でもミラクルでした。
高氏: うんうん。そのリーリーは今、臥龍に出張中のようですね。
はな: 雅安では元気だということを飼育員さんに聞くことができて少し安心しましたが、臥龍に行った後も元気だったらいいな。アップされた動画を見ている限りでは、きっと大丈夫かと。
高氏: 今は繁殖期なのでリーリーは非公開になっていますね。
はな: またファミリーで揃って会える日が来たらいいですね。
【『はなと毎日パンダの 中国パンダ旅 ~雅安・西安篇~』(白水社)所収「エピローグ 対談:雅安・西安へのパンダ旅を終えて」より、冒頭部分を紹介】