【被爆80年】亡き著者の願いに広島の高校生が応答 「この本は、80年前に生きた自分の本」
記事:筑摩書房
記事:筑摩書房
『広島第二県女二年西組――原爆で死んだ級友たち』は原爆で全滅したクラス全員の死までの足どりとさいごの姿を求めて、8月6日から15日までを再現した一冊です。1945年8月6日、腹痛で勤労動員を欠席して死をまぬがれた著者(当時13歳)が、40年の後、一人一人の遺族や関係者を訪ねあるき、突然に逝ったクラス全員それぞれの足跡をたどりながら彼女らの生を鮮やかに切り取った貴重な記録となっています。(第33回日本エッセイスト・クラブ賞/日本ジャーナリスト会議JCJ賞奨励賞受賞)
(遺族の)辛すぎて話したくない気もち、その後の40年間の苦しみも含めて、全員のことを書き残したかった。また同じ組で机を並べていた私が書く以上、単なる被爆記録でなく、一人一人を人間として書きたかった。『広島第二県女二年西組――原爆で死んだ級友たち』「あとがき」より
著者の関千枝子さんは「たまたま生き残った」という罪悪感や「なんの罪もない子どもらの命が理不尽に奪われた」ことへの怒りなど、多くの思いを抱え生涯ヒロシマを問い続けながら2021年2月に出血性胃潰瘍のため88歳でお亡くなりになりました。関さんは2010年に本書が6刷となった際に寄せた原稿のなかで、
「広島市に住んでいる人が、雑魚場地区(爆心から約一キロの地点で多数の少年少女が死んだところ。第二県女の碑もここにある)の碑を見て、こんなところに碑があるなど知らなかったと驚いていた。風化に、私も衝撃を受けた。文庫版六刷を多くの人に、できることなら中、高校生に読んでもらい原爆の実相を知ってほしい。年若い、少年少女たちが犠牲になったことを忘れないでほしいと願う。(……)私が心の傷を忘れられる日があるとすると、それは、核兵器が完全に廃絶される時と思っている。被爆者のできることは実相を後世に残すことしかない。戦争を知らない若い人々にとりあえず、この本を読んでくださいとお願いしたい。」
との願いを綴られていました。
このことを知った広島のノートルダム清心中・高等学校では、平和活動を行う同好会のメンバーや図書委員から希望者を募り18名で読書会が開かれました。
この本は80年前に生きた自分の本なのだ、と私は感じた柳原あいさん 高2
広島で生まれ育った者としてこの事を必ず後世に伝えていかなければならないと思いました安富四季さん 高2
名も顔もある少女たち一人一人の死と向き合うことで、戦争と平和について改めて深く考えることができる一冊です松本奈々さん 高2
「無惨などろどろの死体となった級友」という言葉が想像するだけで恐ろしくて、自分が住んでいる広島という町で80年前にそんな姿でたくさんの方が亡くなったことを忘れないようにしたいと思いました梶本美月さん 高1
名前のリストや証言、風景が鮮明に書かれていてすごくリアルでした。今まで受けてきた平和学習とは違う面から、この本を通して戦争を自分ごととしてより捉えることができました古市菜々子さん 高2
「『広島第二県女二年西組』を読んで」という用紙に一人ひとりが手書きで記した感想からは、未体験の戦争・被爆が自分ごとのように思えてきたこと、さらに次の世代へと記憶を繋いでいこうとする使命感などが込められていました。
■18名全員の感想はこちらでお読みいただけます
https://file.chikumashobo.co.jp/mm_files/2025kansoucard.pdf
今回寄せられた高校生からの感想に著者の遺族からは、
「感想文から、着実に若い世代の皆様の間に様々な感情や考えが芽生え、行動に繋がっていることが伝わってきます。後世への伝達が母の執筆の主目的の一つだったことを考えますと、終戦から80年の今、このような広がりがみられることに、母もとても勇気づけられ、安堵したのではないかと考えます」
とのコメントが返されました。
『広島第二県女二年西組――原爆で死んだ級友たち』を2025年8月6日から3日間限定で全編無料公開します。各電子書籍ストアからお読みいただけます。詳細は各電子書籍ストア『【期間限定配信版】広島第二県女二年西組――原爆で死んだ級友たち』書籍ページをご覧ください。
序章 8時15分―広島市雑魚場町
第1章 炎の中で
第2章 学校に帰った級友たち
第3章 “南へ”―業火に追われて
第4章 島へ
終章 8月15日
章外の章(1)耐えて生きる
章外の章(2)原爆と靖国
“スキャンダル”のあと―『広島第二県女二年西組』余聞
62年目の再開―『広島第二県女二年西組』余聞②
解説 生涯にひとつの作品 山中恒