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「『ニッポン国VS泉南石綿村』製作ノート」書評 アスベスト被害者たちの記録

評者: 佐伯一麦 / 朝⽇新聞掲載:2018年04月21日
『ニッポン国VS泉南石綿村』製作ノート 「普通の人」を撮って、おもしろい映画ができるんか? 著者:原 一男 出版社:現代書館 ジャンル:芸術・アート

ISBN: 9784768476499
発売⽇: 2018/03/20
サイズ: 21cm/286p

ドキュメンタリー映画「ニッポン国VS泉南石綿村」の製作ノート。産業発展の犠牲者として国に捨てられたアスベスト被害者が国家と対峙するまでの8年間の葛藤を、出演者と作り手への…

『ニッポン国VS泉南石綿村』製作ノート [編]原一男+疾走プロダクション

 副題に〈「普通の人」を撮って、おもしろい映画ができるんか?〉とある本書は、タフな表現者を追った「ゆきゆきて、神軍」「全身小説家」で知られる原一男監督が、アスベスト被害に遭った泉南の生活者たちの闘病や裁判闘争の姿をドキュメント映画に撮った、その製作の記録である。
 石綿村とは、かつて大阪府の泉南に存在した、石綿(アスベスト)製品を作る零細・中小工場が集中していた地域で、企業側による救済は行われなかったために、国に対する損害賠償訴訟が起こされた。一審で原告勝訴したものの控訴審では逆転敗訴し、最高裁で再度勝訴して、2014年に国との和解が成立した。
 被害者、弁護士、市民活動家が裁判を闘うなかに、途中から撮影者も加わっていくところが原氏ならではといえる。撮影した被害者が唐突に次々と亡くなっていくところにドラマがあり、当事者たちのエゴイズムも見据えることで、生半(なまなか)でない証言となっている。