「満州事変はなぜ起きたのか」書評 本当に立派な思想家なのか
評者： ／ 朝⽇新聞掲載：2015年10月18日
エラい人にはウソがある 論語好きの孔子知らず
著者：パオロ・マッツァリーノ
出版社：さくら舎
ジャンル：哲学・思想・宗教・心理
ISBN: 9784865810295
発売⽇： 2015/10/07
サイズ: １９ｃｍ／２２０ｐ
満州事変はなぜ起きたのか ［著］筒井清忠
歴史に切れ目はないのだから、歴史的事象を分析するのに、ある時代を切り取ってくることは本来できない。満州事変においても同様である。では、どこから書き出すか。著者が着目したのは「『大衆』の登場」である。日露戦争講和条約反対の日比谷焼き打ち事件にみられるように「大衆の時代」が始まりつつあったと説く。その「大衆の時代」にあって、日本は国際世論に訴え、理解を得るという戦略をまったく欠く一方で、軍部の「ずさんな謀略」や「満蒙は生命線」との「危険な論理」で暴走は続いた。その背後に「満州事変を熱狂的歓呼で迎えることになる大衆の世論があった」と指摘する。「ナショナリズムの取り扱いの難しさ」は今も変わらない。
◇
中公選書・１９４４円
