原武史「震災と鉄道」書評 鉄道の公共性と社会的使命とは
評者: 朝日新聞読書面
/ 朝⽇新聞掲載:2011年11月20日
震災と鉄道 (朝日新書)
著者:原 武史
出版社:朝日新聞出版
ジャンル:新書・選書・ブックレット
ISBN: 9784022734211
発売⽇:
サイズ: 18cm/223p
震災と鉄道 [著]原武史
ヨーロッパでは、教会や広場といった公共的空間が近代の市民社会を育んだ。日本においてその役割を果たしたものが駅であり、鉄道の車内であったとする著者は、「鉄学者」とも呼ばれる鉄道ファンの政治思想史学者。鉄道の公共性と社会的使命を重く見て、JR東日本の震災対応を厳しく批判する。首都圏で当日の運行を打ち切った判断は正しかったか、8カ月以上経っても復旧のめどすら立たない被災地のローカル線はこのまま切り捨てられようとしているのではないか。競合相手が少なく地域独占に近い同社は「(利用者のニーズに)信じられないほど鈍感」で、その企業体質は「東京電力に似ているところがある」との訴えが熱い。
◇
朝日新書・798円