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「視覚化する味覚」書評 人工着色料から考える

評者: 藤原辰史 / 朝⽇新聞掲載:2022年01月29日
視覚化する味覚 食を彩る資本主義 (岩波新書 新赤版) 著者:久野 愛 出版社:岩波書店 ジャンル:新書・選書・ブックレット

ISBN: 9784004319023
発売⽇: 2021/11/22
サイズ: 18cm/204,7p

なぜ人は、ある特定の色をその食べ物の「自然な(あるべき)」色だと思うのか。食べ物の色に焦点を当て、資本主義の発展とともに色の持つ意味や価値がどのように変化してきたのかを、…

「視覚化する味覚」 [著]久野愛

 本書の柱の一つは「人工着色料の米国史」である。カリフォルニア産と比べてオレンジの色がくすんでいると感じたフロリダの農家は、オレンジの色の多様さを訴えて差異化を図ろうとしたり、エチレンガスで果実を熟れさせる方法を取ったりしたが、やがてムラのない人工着色料に行き着く。また、人工着色料による健康被害が社会問題化し、消費者の激しい批判を浴びた国家が禁止措置を取るという歴史も興味深い。
 もう一つの柱は「自然と人工」に関する考察である。バターとマーガリンの色をめぐるバトルが圧巻だ。マーガリンに押されたバターの生産者は、マーガリンよりもバターらしい濃い色をつけるために人工着色料を用いたり、牛の飼料を変えたりして対抗しようとする。この「偽物を真似(まね)る本物」の物語から食の「自然さ」をめぐる議論の複雑さを知ることができる。
 経営史、感覚史、環境史を融合するチャレンジングな叙述で次回作も楽しみだ。