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月村了衛さん「機龍警察 漆黒社会」人型兵器・人身売買…闘う特捜部 貫く謎

月村了衛さん

 小説家、月村了衛さんの人気シリーズ第7弾「機龍警察 漆黒社会」(早川書房)が刊行された。骨太な大河警察小説であり、国際色あふれる冒険小説であり、SF要素を織り込んだアクション小説。エンタメ小説の粋が詰まったシリーズの「第一部完結」をうたう。

 テロや民族紛争の激化に伴い、人型軍用兵器「機甲兵装」が台頭した至近の未来、警視庁は元外務官僚の沖津をトップにした特捜部を新設した。最新型兵装「龍機兵」を導入し、搭乗員に国籍の異なる3人の傭兵(ようへい)を雇い入れ、凶悪な国際犯罪に立ち向かう。

 チェチェン紛争で家族を失った女だけのテロ組織(第4弾「未亡旅団」)をはじめ、特捜部は中国の黒社会やロシアンマフィアなどが関わる事案を処してきた。本作の事案は国際的な人身売買。子どもたちが四肢を切断され、機甲兵装搭乗に特化した義肢を着けられ、紛争地域に出荷されようとしていた。

 「日々ニュースを見ていると、戦争をはじめとした悲惨な現実が目に入ってくる。アフリカなどで子どもを拉致して少年兵に仕立てる犯罪への問題意識があって、過去に短編「輪廻(りんね)」(「火宅」所収)を書いた。そのテーマを掘り下げようと思ったんです」

 捜査上に浮かんだのは特殊義肢の開発に携わる日本の医療機器メーカーへの疑惑。この会社をめぐり、国内外の入り組んだ利害関係が明らかになっていく。加えて警察内部や防衛省、外務省などの思惑が錯綜(さくそう)し、特捜部を翻弄(ほんろう)する。

 一方で太い軸となるのが、第1弾から謎めいた存在感を放っていた香港黒社会の幹部・關(クワン)。なぜか中国・新疆ウイグル自治区の強制収容所の実態を調べている關の壮絶な過去が次第に明らかになっていく。

 「ウイグル人や法輪功への弾圧にも昔から関心がありまして。關の過去について考えていくうち、人身売買に結びつけられるんじゃないかと。まるで最初から考えていたかのように、すべての要素がつながっていったんです」

 機甲兵装同士の詳細かつ壮絶な戦闘シーンもシリーズの大きな魅力だ。本作でも、犯罪拠点への突入作戦での大乱戦から、傭兵・姿と關との因縁の一騎打ちまで、良質の剣豪小説さながらに筆が進む。

 「アクション場面を書くのは体力勝負なんです。かなり気合を入れないと体力が持たない。年々衰えていますが、なんとか書き上げられた。まだまだ大丈夫かなと思っています」

 「機龍警察」は2010年、47歳で出したデビュー作。シリーズ作は日本SF大賞と吉川英治文学新人賞を受け、その後の活躍もめざましい。戦後最大の詐欺といわれた豊田商事事件をモチーフにした「欺(だま)す衆生」で山田風太郎賞。北朝鮮の帰還事業の闇をあぶりだした「地上の楽園」で今年の中央公論文芸賞に決まった。

 「デビュー時から一貫して現代社会における暴力を描いています。ただ本シリーズは言ってみれば勧善懲悪であって、特捜部が許せない犯罪と闘うカタルシスが求められている。機甲兵装といった特殊な能力も扱っているので、歴史上の事件を題材にする作品とは、おのずと書き分けることになりますね」

 「第1弾からの伏線が大半回収されたから」と第一部完結をうたう本作だが、特捜部創設や龍機兵開発の経緯、沖津部長がしばしば口にする「敵」の正体など、大きな謎は残されたままだ。

 「南米マフィアや北方領土問題など、書きたい事案は山ほどあるんですが、デビューが遅かったものですから、年齢を考えると第二部か第三部で完結しないとまずい。断腸の思いで巻いていこうと思います」(野波健祐)=朝日新聞2026年9月30日掲載