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初めての「土曜日」 澤田瞳子

 最近、時間ができると、自分が十代、二十代だった頃のテレビドラマをネット配信で少しずつ見ている。わたしが生まれ育った家はニュースと決まった番組以外、ほとんどテレビをつけなかった。当時大ヒットしたドラマにほとんど接さぬままこの年齢まで来たので、せっせとそれを取り返しているのだ。

 バブル崩壊期、世紀末……令和の今日から見る風景は、ドラマのストーリー以上に興味深い。登場人物たちが話す言葉の中には、今日では死語となったものも数多く、その中でことに親しみ深く感じたのが「半ドン」だ。

 わたしが高校生の頃、学校はまだ完全週五日制を敷いていなかった。大人の社会でも週休二日が浸透しきっていたとは言い難く、午後半休を意味する「半ドン」は馴染(なじ)み深い語だった。二〇〇〇年前後からこういった風潮は改められて週休二日制が一般化し、今では「半ドン」と言っても分からぬ方も多いと聞く。ただわたしは大学では土曜日にサークル活動があり、大学院では土曜日に開講される講義のアシスタントを務めていた。その後、アルバイトとして雇用してくれた古巣の大学研究室でも土曜日に出勤し、今日にいたっている。このためいまだに、世間一般では土曜日が休みと見做(みな)されているとの事実が、どこか釈然としない。まるでわたし一人をおいて、「半ドン」がどこかに隠れてしまったような感覚すら抱いてきた。

 ただかれこれ二十年に及ぶ大学でのアルバイトは、間もなく契約が切れる。現在の規定上、出勤日の少ないわたしのようなバイトはもはや契約更新ができないらしい。というわけでわたしは近々、世の中から四半世紀も遅れて、やっと土曜日が休みの暮らしを手に入れる。本業がモノカキである以上、結局は土曜日も日曜日も机に向かってしまうのだろうが、それでもさて、人生ほぼ初めて目の当たりにする週休二日暮らし。それはいったいどんなものなのか、今から楽しみである。=朝日新聞2026年10月14日掲載