香港は、この先、これからどこに行くのか、どう変わるのかを考える
記事:明石書店
記事:明石書店
中国は香港返還の道程を短縮して、大陸との一体化を加速させている。
香港はどうなっていくのだろう。いままでの自由な香港ではなくなっていくのだろうか、と専門家でもない私(担当編集者)には皆目見当のつかない問いを自分に発している。
今回、若い世代の香港研究者である小栗宏太先生が編者に加わった。小栗先生は本書の「あとがき」でこう記している。
「香港は変わった、とよく言われる。この街がかつて持っていた輝きや個性が失われてしまったという意味で、である。そうした香港の変化にまつわる論調には、個人的には複雑な思いもあった。1989年の天安門事件の2年後に生まれ、2014年の雨傘運動前後に香港研究を志した筆者は、しばしばそうした議論の中で黄金期として言及される返還前の香港を実体験として知らないからである。私の経験してきた香港は「もはや香港ではない」香港だったのだろうか、と。
返還を機に香港が変わったのは事実だろう。だが私が見てきた香港にも、「変わった」「死んだ」と言われ続けながら、その変化の中を生きてきた人々がいた。
……
2020年の国家安全維持法の導入が、香港にとって返還以来最大の転換だったことは間違いない。香港の変貌や死を嘆く声も再び巷に溢れている。この先の香港がどう変わっていくのかは、もはや専門家にすら予想がつかない。しかし確かなのは、香港が今後どんな道を辿ろうとも、そこに暮らす人々の生活は続くということである。変化の先を見つめ続けることこそが、今日の香港を憂う者に求められている態度だろう。本書が少しでも、これからもこの街に関心を抱き、寄り添おうとする人々の助けになることを願っている。
……」
確かに、香港がどう変わろうと、この地にうまれ、この先もここで暮らしていく人々がいる以上、香港は香港であり続けるのだろうとも思う。そもそも、今までも時代時代の影響を受けて香港は変貌していき、その歴史を紡いでいったともいえる。であれば、そう悲観する必要もないかもしれない。