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アルトゥール・ショーペンハウアー『随感録』
ショーペンハウアー哲学は「青春の哲学」です。
青春はいつの世にも百パーセントの可能性をはらんでいるがゆえに、かえってこの世のみにくさ、わが身のはかなさ、諸行無常を痛感するもの。
ショーペンハウアーはわれわれの生の本体は盲目の「意志」であるとし、「欲望」「本能」「情熟」といった、ヨーロッパの正統哲学からスルーされてきた側面にこそアクセントを置いて、新しい哲学を樹立しました。
その伝統はニーチェに継承され、「生の哲学」から実存主義の哲学に及ぶ広範囲の現代哲学に影響をもたらしたのです。
フィーリングを核心とする機知と毒舌の書、待望の復刊。
ワイリー・サイファー『文学とテクノロジー──疎外されたヴィジョン』
芸術家は「テクノロジー」から逃避できるでしょうか?
芸術に「科学の正確さ」を求めた自然主義者はもちろん、純粋な美を目指した象徴主義者やデカダン派にいたるまで、19世紀の芸術家たちは「美のテクノロジー」に憑かれていました。
マラルメはすべてを計算して詩から偶然を排除せんとし、フローベールは考古学的考証に耽り、ゾラは芸術家は現象をうつす写真家でなければならないと説きました。
産業社会に反逆、あるいは逃避したはずの作家たちが、じつは自分たちの忌避したテクノロジー思考に支配されていたことをあばき、近代における「方法の制覇」や「視覚の専制」、そこから生じる距離と疎外の問題を論じてゆきます。
文化史の革命的書き換えを成し遂げた名著、待望の復刊。
マルカム・ラウリー『火山の下』
ポポカテペトルとイスタクシワトル。
二つの火山を臨むメキシコ、クアウナワクの町で、妻に捨てられ、酒浸りの日々を送る元英国領事ジェフリー・ファーミン。
1938年11月の〈死者の日〉の朝、最愛の妻イヴォンヌが突然彼のもとに舞い戻ってくる。
ぎこちなく再会した二人は、領事の腹違いの弟ヒューを伴って闘牛見物に出かけることに。かつての恋敵ラリュエルも登場し、領事は心の底で妻を許せないまま、ドン・キホーテさながらに破滅へと向かって突き進んでいく──。
ガルシア゠マルケスや大江健三郎ら世界の作家たちが愛読した20世紀文学の傑作、待望の復刊。
マルグリット・ユルスナール『火──散文詩風短篇集』
異性愛の敗北を肯定し、同性愛を正当化する美的恋愛観がライトモチーフ。
マルグリット・ユルスナールは、フランス貴族の末裔である父とベルギー名門出身の母とのあいだに生まれましたが、生後まもなく母を失うと博識な父の指導のもと、もっぱら個人教授によって深い古典の素養を身につけます。
『ハドリアヌス帝の回想』で国際的な名声を獲得し、『黒の過程』でフェミナ賞を受賞すると、女性初のアカデミー・フランセーズ会員になりました。
そんな彼女が書きしるしていた瞑想と空想との大胆な交錯、神話的古代への嗜好、また古代的に美化された同性愛への偏愛……。
詩的アフォリズムを散りばめた初期の短篇小説、待望の復刊。
アラン・ロブ=グリエ『弑逆者』
弑逆者(しいぎゃくしゃ)とは、君主や父親を殺害する者のこと。
霧と雨に閉ざされた絶海の孤島での「眠る人魚の誘惑」、単調で退屈な工場で働く会計係による「王殺しの冒険」が語られてゆきます。
ふれては、また遠ざかる二つの物語。いずれが現実で、いずれが幻覚か?
「ロブ=グリエのその後のどの作品とも異なり、彼の私的体験から直接生まれた最も自伝的色彩のつよい小説」です。
執筆後30年を経て発表された幻のデビュー作、待望の復刊。
*「書物復権2023」は、10社(岩波書店、紀伊國屋書店、勁草書房、青土社、創元社、東京大学出版会、白水社、法政大学出版局、みすず書房、吉川弘文館)共同開催。
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