ジェンダー平等指数14年連続1位! アイスランドが生んだ「世界初の女性大統領」——『世界ではじめての女性大統領のはなし』
記事:平凡社
記事:平凡社
アイスランドは、北極よりもすこし南にある島国です。面積は約10万3000平方キロメートルで、北海道と四国をあわせたくらいです。「アイスランド」という名前は「氷の土地」という意味ですが、土地の約1割が氷河におおわれ、火山活動も活発なので、「火と氷の島」とよばれることもあります。
アイスランドの人口は2024年3月現在約40万人です。そのうち3分の1以上の約14万人が首都のレイキャヴィーク(「煙の入り江」という意味)に住んでいます。アイスランドのほとんどの町の人口は1万人もありません。
夏には白夜がつづき、太陽がほとんどしずまないので、夜になっても明るいままです。反対に冬には極夜がつづきます。太陽がのぼる時間がおそく、のぼってもすぐにしずんでしまうので、明るい時間がすくないです。冬至(毎年12月21日ごろ)には、10時ごろからすこしずつ明るくなりだしますが、日の出は11時半前です。日の入りは19時よりすこし前ですが、17時前にはもうまっくらです。
この国は、はじめは無人島だったようです。アイスランドの歴史は、9世紀のおわりごろ、ノルウェーからやってきたひとびとが住みはじめたときから始まります。それから60年ほどは、デンマークやスウェーデンのあたりからもアイスランドに来るひとがたくさんいました。もともと暮らしていた土地をはなれてアイスランドに移り住むときには、家畜や奴隷をいっしょにつれてきました。
はじめはほかの国のひとから指図を受けずに暮らしていたアイスランド人ですが、13世紀中ごろにアイスランドはノルウェー王のものになります。その約100年後には、ノルウェー王からデンマーク王のものになってしまいます。1918年に独立しますが、このときのアイスランドはまだデンマーク王の国のひとつで、アイスランド王国という名前でした。アイスランドに大統領が誕生したのは、1944年に共和国になったときです。
アイスランドは、世界で男女間の平等がいちばんすすんでいる国として紹介されることがあります。けれども、はじめからそのような国だったのではありませんでした。女性は選挙のときに投票も立候補もできませんでしたし、学校に通うこともできませんでした。アイスランドで女性が投票できるようになったのは1915年のことでしたが、40歳以上でないといけませんでした。ほかにも問題はありました。たとえば、男性と同じように仕事をして家にかえってきても、料理や洗濯などの家事は女性がするのがあたりまえだと思われていたのです。
女性と男性の立場のちがいをなくすため、アイスランドの女性たちは、たくさんのひとの前でなにが問題かを話したり、雑誌をつくって自分たちの考えをわかってもらおうといろいろな活動がながいあいだおこなわれました。そして、1975年10月24日に「女性の休日」というストライキがおこなわれました。その日女性は、会社などでお金をかせぐための仕事だけでなく、生活に必要なそうじや料理などの家での仕事もしませんでした。アイスランド社会はとても混乱しました。このことは、女性がどれほど社会でたいせつな役割をはたしているかを示しました。
ただ、このあとすぐに社会が変わったわけではありません。女性であるというだけで、なにができてなにができないのかを決めつけられてしまうことは、いまでも完全にはなくなってはいません。けれども、1980年にヴィグディス・フィンボガドッティルさんが大統領になったことは、アイスランドだけでなく世界にとっても大きなできごとでした。選挙中や大統領になったばかりのときは、ヴィグディスを邪魔する声もありましたが、だんだんとなくなっていきます。ヴィグディスが大統領を引退するときには、「大統領は女性がする仕事だと思っていた」と言った子どもがいたほどに、彼女は大統領の仕事をまっとうし、アイスランド国民に愛されていました。それまでは、大統領は男性だけがする仕事だと思われていましたが、それはまちがいでした。
ヴィグディスが大統領にえらばれて、その仕事をりっぱにおこなったあとでも、アイスランドはまだまだ男性と女性が平等の国ではありませんでした。じつは、いまでもそうです。自分の性の受けとめかたや、受けとめた性にあわせた生きかたを理由にひどいあつかいを受けるひとがいないように、アイスランドではいまでも「わたしたちはなにをすべきか」が話しあわれ、考えつづけられています。