まちづくりは、誰が担うのか――一人ひとりが役割を見つけ、関わり続けるための実践知『まちづくりライフのすすめ』
記事:明石書店
記事:明石書店
全ての人は、生まれながらにしてまちづくりに関わっている。
これが、この本を通底する原則である。
ただし、この原則を意識していない人が圧倒的多数であることは筆者もよく理解している。その上で、なるべく多くの人が自身がまちづくりに関わっていることに気づくべきであり、その割合が大きくなればなるほど社会と個人の幸福度が上がっていくことを論じるところから本書は始まる。
当然のことながら、地域の中には様々な立場の人がいる。年代も性別も立場も価値観も様々である。まちづくりにはそうした複雑さがあり、しばしば困難が伴う。しかしながら、そこに他者への理解と適切なノウハウを導入することにより、誰もが地域における自分の役割を発見し、共に助け合って幸せなコミュニティを築く道は開かれる。この本は、そんなまちづくりの進め方を解き明かすことを目的とし、約40年にわたり様々な市民活動を実践してきた知識と経験を注ぎ込んだ一冊となっている。
個人も社会も幸せになるまちづくりの進め方について、本書では4つの視点から論じている。
「1 まちづくりは誰がやるのか」では、「地縁組織」「行政」「市民活動」「ビジネス(企業)」「中間支援組織」など、まちづくりに関わる様々な人々を取り上げて、その特徴とそれぞれが抱える課題、まちづくりにおける生かし方、生かされ方について説明している。「2 まちづくりのプロセス」では、多様な人々が関わることを前提に、まちづくりを進める際の理念のつくり方から具体的な行動計画の立て方までを一連の作業として解説している。ベースとなっている「未来デザイン」という手法は全国のまちづくり現場での実践を通して磨かれてきた実用性・汎用性の高いツールである。
「3 まちづくりのガバナンス」では、進行するまちづくりをより確かなものに成長させるために、参加の場や組織の運営のしかた、長い目で自立・自走できるコミュニティのつくり方を採り上げている。具体的には、理念と顧客、事業、共感形成、意思決定に関する計25個の質問を投げかける形でそれぞれのポイントを列挙する。
「4 まちづくり人のスキル」では、まちづくりに関わる人々の活動を「ファシリテーター」「コーディネーター」「プロデューサー」「アナライザー」などの6つの役割に分け、それぞれに必要とされる技術や具体例を紹介すると共に、お互いのスキルがかみ合うことでまちづくりがよい方向に進んでいくメカニズムについて論じている。総じて筆者自らが経験し、あるいは活動の中で出会ったプレイヤーたちの働きを基に書かれており、地域社会の現実に即したものになっている。
改めてこの本の特徴を一言で表すならば、普遍的かつ未来志向の実用書であると言えるだろう。まちづくりは高い情熱と知識・技術をあわせ持った一握りの人々のすることだと捉えられがちだが、それでは小さな声や多様なニーズが生かされにくいだけでなく、人が代わると活動が持続しない「属人性」という課題を抱えることになりかねない。情熱や技術の高さを否定はしないが、それと同時になるべく多くの人々が自分の役割を地域の中に見出し、主体的に参画することが望ましく、それはまちづくりにおける普遍的な命題であると言えるだろう。また、そうやって担い手のすそ野を広げ、活発な議論やコミュニケーションを通した方向性が受け継がれていくことにより、未来に向けて持続可能な地域の発展を期待することができる。本書が協働や合意形成の必要性に重きを置いている点や、究極の未来像である理念の共有からまちづくりを始めることを重視している点も、そうした考え方の延長線上にある。
そして、この本に書かれていることは机上の空論ではない。実際に存在した活動や筆者自身の実体験が元となった処方箋(しょほうせん)であり、日本のまちづくりの未来を見据えた実用書であると言える。