「ニクソンとキッシンジャー」書評 仔細な分析で指導者像問い直す
評者: 保阪正康
/ 朝⽇新聞掲載:2014年03月02日

ニクソンとキッシンジャー 現実主義外交とは何か (中公新書)
著者:大嶽 秀夫
出版社:中央公論新社
ジャンル:新書・選書・ブックレット
ISBN: 9784121022448
発売⽇:
サイズ: 18cm/212p
ニクソンとキッシンジャー―現実主義外交とは何か [著]大嶽秀夫
ニクソンとキッシンジャーが、アメリカ政治を動かしたのは1969年から74年までの5年半ほどである。この間に、デタント政策を成功させ、米中和解を進め、ベトナム戦争終結と多くの外交的成果を上げた。大統領と大統領補佐官という、このコンビはアメリカ政治を「世界のリーダー」の座に強固に位置づけた。
ニクソンには反共政治家、扇動家、さらに野心家といった評が、キッシンジャーには狡猾(こうかつ)な謀略家、味方をも裏切る非情さといった評があるのだが、著者はそうした一般的なイメージをふたりの外交戦略を仔細(しさい)に分析することで覆していく。ニクソンのポピュリズムを六つの手法で明かし、「敵の存在が不可欠」として既存の政治エリートを指摘する点など興味深い。キッシンジャーは毛沢東、周恩来などと哲学を語り合い、そのことで、北京訪問以来、国内の高学歴層、上層中産階層に「絶大な人気」を得たと見る。
改めて指導者像を問い直す著者の筆は説得力を持つ。
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中公新書・840円