第159回芥川賞直木賞の贈呈式が24日、東京都内で開かれた。芥川賞は高橋弘希さんの「送り火」(文学界5月号)、直木賞は島本理生さんの『ファーストラヴ』(文芸春秋)に贈られた。
芥川賞は選考委員を代表して小川洋子さんが「個性豊かな作品がそろった」と講評。受賞作は「とてつもない混沌に読者を引きずり込む。ラストの暴力の先に何があるのか、答えようがない。それが作品のすばらしさ」と話した。
高橋さんは巻物のような厚みのある原稿を手にして登壇。「大変光栄で身の引き締まる思い。この受賞におごることなく誠心誠意、作品に向き合っていきたい」。無言でしばらく会場を見回し、「終わりなんすけど」。ここまでたった数十秒。「今日はパーティーなので、ローストビーフを食べて帰りたい」と言って、壇を降りた。
直木賞選考委員の東野圭吾さんは受賞作を「読者に次のページをめくらせようとする工夫や努力が誠実に感じられた」と評価。「何が売れるか、何が楽しまれるかということを思いついた時、それが書きたいと思えるような作家になったら素晴らしい」とはなむけの言葉を贈った。
島本さんは「自分よりキャリアも上で、人気のある作家が新しいことに挑戦しているのを見て、背中を押されたことが何度もあった」と振り返った。話の途中で結構足が震えてきたと明かしつつ、「今回の受賞を機に、自分よりも若手の作家にも書き続けることで見えてくる世界がもしかしたらあるのかな、という風に思ってもらえたらすごくうれしい」と語った。(中村真理子、木元健二)=朝日新聞2018年8月29日掲載