人生、さまざまな出会いがある。発見がある。約5年前に出会ったのが、茶道だった。茶道をしていた祖母の着物を受け継ぎ、着付けができるようになったのがきっかけ。それとなく茶道にひかれてはいた。千利休をテーマにしたテレビ番組で知己を得た茶道研究家の筒井紘一さんが、茶道熱に火をつけた。
本は裏千家流茶道の機関誌「淡交」に1年間連載した対談を元に編集。「茶室にあるほとんどのものにかかわることになりました」
茶事、茶室、趣向、香、菓子、懐石、着物、道具など各職人や先達に教えを請い、制作などを実体験。その様子を対談形式でつづっている。体当たりする写真、自ら手を入れた専門用語の解説も掲載。臨場感にあふれ、読者は、茶道の世界に誘われ、あたかも一緒に体験していくかのよう。自身の着物姿の写真からは至妙な着こなしも伝わる。
約250年前の楽焼(らくやき)を手に興奮する場面も出てくる。「手にひっついてきた。お道具が生きている感じです」。茶会の亭主役もつとめ、筒井さんを招いた。菓子は手作りで、しかも形状はざるソバのよう。「謎のある予想外のものへの客人の驚きが、自分の喜びなのです」
大学時代には「シルクロードと日本の仏像比較にはまった」といい、仏像愛に加え、茶道愛も止まらない。「随所にうるっときちゃうくらいの心のこもった美しさがあります。知識は礼儀でもあり、型以外の遊び心、自由さは無限に広げられる。日本と出会い、楽しむ感覚です」
茶道を通じ、「物事を知らない自分」との出会いもあった。「お茶は本当にわからないことだらけ。今更聞けないとなると、心が固まりますが、お茶のお稽古では素直に聞くことができ、心がほぐれてきます」
インターナショナルスクール時代の17歳から始めたモデルの仕事は、今年30周年を迎える。エッセー、ラジオのDJなどでも活動する日々。現在は月4回、稽古に通い、「ぜいたくな異空間、異時間」を堪能する。
「茶道を続け、もうちょっと、いい大人になって、将来、知識と礼儀のあるおばあちゃんになりたいです」(文・米原範彦 写真・谷本結利)=朝日新聞2019年2月23日掲載
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