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東国の「あの世」、仏教美術で考える 埼玉で特別展

江野楳雪「十界図」(曹源寺蔵)

 死んだ後、私たちはどこに行くのだろう――。

 「あの世」である地獄・極楽に関わる信仰は、東国では鎌倉時代以降、浄土宗の布教と共に、さらなる広がりをみせる。埼玉県立歴史と民俗の博物館(さいたま市)の特別展「東国の地獄極楽」は、仏教美術を軸に人々の浄土往生への思いをとり上げた、まじめで楽しい展覧会だ。

 展示は5部構成。しかし、源平争乱の際に平敦盛を討ち取り、後に法然の弟子となった熊谷直実(くまがいなおざね)(蓮生〈れんせい〉)や、法然没後に栄えた浄土宗鎮西流の関東三派などを扱った緻密(ちみつ)な前半と、「閻魔王坐像(えんまおうざぞう)」や「地蔵十王図」「地獄図」などが並ぶ大迫力の後半では趣が大きく異なる。

 情報量は多いものの、めりはりがついているため、飽きは来ない。会場には埼玉県の曹源寺に伝わる江野楳雪(えのばいせつ)の「十界図」や三学院の「地獄図」、快慶作とみられる東善寺の「阿弥陀如来立像」など、各寺の寺宝クラスがひしめき、企画者がていねいに交渉を重ねて借り出してきた様子がうかがえる。5月6日まで。3月25日、4月29日を除く月曜休み。(編集委員・宮代栄一)=朝日新聞2019年3月20日掲載