1. HOME
  2. ニュース
  3. 野間文芸賞に松浦寿輝さん「人外」 「言葉の姿や形で、たえず冒険をしたい」

野間文芸賞に松浦寿輝さん「人外」 「言葉の姿や形で、たえず冒険をしたい」

野間文芸賞を受けた松浦寿輝さん

 今年の野間文芸賞に、松浦寿輝さんの『人外(にんがい)』(講談社)が選ばれた。受賞会見で松浦さんは、「言葉の姿や形で、たえず冒険をしたいという気持ちで書いてきました」と語った。『人外』は、人間ではない、名前を持たない、何かの視点で描かれる。世界をめぐり歩きながら「人外」が目にする風景は、死の臭いが強く、廃虚のようだ。悲惨な世界はしかし、美しい文でつづられている。

 1作ごとに作風が変わる。前作『名誉と恍惚(こうこつ)』は重厚な歴史ミステリーの趣もあり「詩的なものを排除した、堅固に構築した散文」。一方、『人外』は詩のような文体で、「必然的に散文詩に近づいた」という。はじめは詩を、40歳を過ぎて小説を書き始めた。「小説作品を様々に試みたあとで書いた。出発点に戻ったのかもしれない」(中村真理子)=朝日新聞2019年11月13日掲載