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「カラスは飼えるか」書評 一筋縄ではいかない甘えん坊

評者: 黒沢大陸 / 朝⽇新聞掲載:2020年06月06日
カラスは飼えるか 著者:松原始 出版社:新潮社 ジャンル:動物学

ISBN: 9784103532514
発売⽇: 2020/03/23
サイズ: 20cm/223p

カラスは飼えるか [著]松原始

 人気のカワセミを探すには、どうするか。水際にさされた棒や枝があればしめたもの。その姿を狙う素人カメラマンが止まらせようと仕込んだものだという。望遠レンズを構えた人たちがいれば、「モデルさんの撮影会の世界である」。
 脳内がカラスだという動物行動学者が、鳥たちの生態や人間との関わり、そしてカラスの思いがけない姿を楽しくつづっていく。
 飛ぶには莫大なエネルギーを使う。「栄養価が高く、消化の早い餌を大量に必要とする」という視点を得ると、ごみ置き場の惨状がいつもと違って見え、街で見かける鳥の動きを、その費用対効果を考えながら目で追ってしまう。
 カラスの動きが賢そうに見えてくるが、考えすぎも禁物。なんでもないことも「素晴らしい知能の発露」と思いかねないそうだ。
 表題の「飼えるか」。いたずらっ子だが、ヘタレで甘えん坊というカラスは、一筋縄ではいかない。