クリスマスや年末年始のプレゼントに「本」を――。メディア業界紙を発行する文化通信社が、今年から「ギフトブック・キャンペーン」を始めた。欧米では一般的という「本を贈る文化」を広めるのが狙いだ。
活字離れで、書店経営は厳しい状況に置かれている。書店調査会社のアルメディアによると、全国の書店数はこの20年で半分近くまで減った。文化通信社の山口健社長は、「書店は本を愛する書店員が品ぞろえに工夫を凝らしている、いわば出会いの場です。そうした街の本屋さんを応援したい、と本屋に足を運ぶためのきっかけ作りをしました」という。
欧米では、クリスマスシーズンに書店の店頭にプレゼント用の書籍の専用コーナーが大々的に展開され、ギフトブックの専門店もあるという。「活字の魅力をより知ってもらい、地域から書店の灯を消さないためにも、自分で読むだけでなく、『本を贈る』習慣を提案したい」
そこで、俳優の石坂浩二さんや歴史家の磯田道史さん、作詞家の秋元康さんなど、各界の読書家34人が3冊ずつおすすめの本を紹介する「ギフトブック・カタログ」を制作。「本の日」である11月1日から、全国の約1500の書店で100円で販売する。また、キャンペーン参加店で千円以上買うと、抽選で図書カードやワインなどが当たる企画もある。
発起人代表を務める作家の阿刀田高さんは、カタログに「本を贈ることをもっと軽く考えて、ちょっとした機会に、気軽に本を贈る習慣を、生活の中に持つようになると良いと考えています」とメッセージを寄せた。
発起人の一人であるオリックスの宮内義彦シニア・チェアマン=写真、久保寺誠氏撮影=は、「誰だっていい本を読みたい。書籍を推薦してもらうのは、とても参考になる」と語る。実際、海外の経営者から本を贈られることが多く、参考になっていると明かす。自身が選んだ1冊は、半藤一利さんの『昭和史』(平凡社)。「特に若い人にはよくすすめている本」という。「現在の問題を考えるには、まず近現代史を知って欲しい」(滝沢文那)=朝日新聞2020年10月31日掲載