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今年のベストセラー、ロングセラーが上位 総合1位は「人は話し方が9割」、新刊より売れ筋推し?

『推し、燃ゆ』は単行本フィクション部門の1位だった

 今年の年間ベストセラーが取次大手の日本出版販売(日販)から発表された。集計期間内に刊行された新刊はトップ20のうち4作品にとどまった。ロングセラーが上位を占める現状について、出版業界に詳しいライターの永江朗さんは「出版社や書店の販売戦略が変わった結果では」と見る。

 日販が発表した年間ベストセラーの総合ランキング(集計期間は2020年11月24日~21年11月21日)によると、1位は会話のコツを紹介する『人は話し方が9割』(永松茂久著、すばる舎)、2位はスマートフォンが脳に与える影響について警鐘を鳴らす『スマホ脳』(アンデシュ・ハンセン著、久山葉子訳、新潮新書)、3位は芥川賞受賞作『推し、燃ゆ』(宇佐見りん著、河出書房新社)だった。トップ20のうち、これら上位3作品を含む計16作品は集計期間より前に刊行された既刊本だ。

 日販の直近3年分の年間ベストセラー総合トップ20を見ると、新刊の数は19年が10作品、20年が8作品、21年が4作品と減少傾向にある。

 永江さんは、人口減と出版市場の縮小傾向が続く中、大量の返品が業界全体を圧迫しており、「出版社は返品のおそれがある新刊を次々と刊行することよりも、今売れている本をさらに売り伸ばすことに注力するようになっている」と指摘する。出版社は売れている本の宣伝に力を入れ、書店も売れ筋を優先して店頭に並べる。こうしてロングセラー中心の売り上げランキングが出来上がるという。「新刊をたくさん出して返品の山を作るよりも、ある意味で健全ではないか」と永江さんは話す。(川村貴大)=朝日新聞2021年12月8日掲載