三島賞・岡田利規さん「誰とも共存しない愉悦 かみしめ」
『ブロッコリー・レボリューション』(新潮社)で三島賞を受けた岡田利規さんは今年、鶴屋南北戯曲賞を受けるなど、劇作家として活躍している。小説の執筆について「誰とも共有されない、自分だけしか経験しないことを持つこと」と、集団で創作する演劇との違いを述べ、「このような華々しい場であるからこそ、誰とも共有することのない愉悦の経験の素晴らしさを改めてかみしめているところです」と語った。
山本賞・砂原浩太朗さん「人生の奥行き 読者の心に残れば」
山本賞の砂原浩太朗さんの『黛(まゆずみ)家の兄弟』(講談社)は17歳の武士を主人公に、政争に巻き込まれていく3兄弟を描いた時代小説。「僕はビルドゥングスロマンの信奉者で、どんな短編でも最初と最後で主人公が何らかの変化や成長を遂げてほしい、遂げているはずと思って書いてます。人生の奥行きのようなものが読者の心に残れば作者として本望です」と話した。
川端賞・上田岳弘さん「パンデミック 終わって再読して」
優れた短編に贈られる川端賞の上田岳弘さんは「2020という数字の並びに、何かが起きるのではないかという暗示的なものを感じていました」と切り出し、受賞作を表題にして4短編を収めた単行本『旅のない』(講談社)について、「オリンピック延期などが起きた2020年の現場リポートに徹した作品集。パンデミックが終わってから再読すると、違ったおもしろみを感じていただけるのではないかと思います。この状況が早く収まるように願います」と締めくくった。(野波健祐)=朝日新聞2022年6月29日掲載