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応援してくれた人たちに「ありがとう」を 志村季世恵さん「エールは消えない」出版記念講演

樹木希林さんとの思い出、書くと決断した理由

 『エールは消えない いのちをめぐる5つの物語』というタイトルは、「この世を去っても、応援の思いはずっと生き残る。まるでお守りみたいに」という志村さんの言葉から生まれたという。その言葉どおり、いまは亡き人を含め、たくさんの人たちの応援(エール)に励まされて、この本は完成したと志村さんは振り返る。

 俳優の樹木希林さんもその一人だ。希林さんの晩年に寄り添い、セラピストとして深く関わった志村さん。2018年9月に希林さんが亡くなってから、多数の出版社から本の執筆オファーが殺到した。だが、関係性が濃い分、希林さんのことをどこまで伝えていいのか分からないこともあり、断り続けていたという。そんな中、幼いころに母親を亡くし、志村さんが長年見守ってきた少年が新たな人生の門出を迎えることとなった。志村さんは、彼に一人の「お母さん」の姿として希林さんのことを伝えたいという思いから、この本を執筆することを決めた。「希林さんだけでなく、いろんな『お母さん』をプレゼントしようと思いました。いろんな生き方や応援の仕方があることを知ってもらいたかったんです」

 いろんな「お母さん」の一人として、自身の母親も登場する。10年ぶりに本を執筆することになった志村さんだったが、セラピストとしてはもちろん、体験型対話を通じてより良い社会を目指す「ダイアローグ・ジャパン・ソサエティ」の活動も多忙を極め、執筆時間を作るには家事など母親のサポートが必要だった。ところが、執筆中に母親が末期がんであることが判明する。「それでも母は『大丈夫、絶対に治るから』って、こちらが信じたくなっちゃうぐらいに言い切るんです。『だから心配ないよ、書きなさい』と、言い続けていました」。本書の執筆中に母親を看取ることになったが、母親が残した言葉に背中を押されて書き続けることができたという。

人が亡くなることから生み出されるもの

 志村さんが自身の造語である「バースセラピスト」と名乗るには理由がある。「人が亡くなるということは、終わりではないんです。何かを生み出す力がある。どんな人もまわりの人のサポートがあれば自分の願いを叶え、大切な人たちに自分の思いを伝えることができる。そして、その思いは遺族や大切な友だちが受け取り、それを種にして芽吹かせることができるんです」

 さまざまな人の晩年に伴走してきた志村さんだが、人を看取るのは決して得意ではない。別れの度に大泣きし、気持ちが沈んでしまうという。「だからこそ、どんな人にも生み出す力があることを忘れてはいけないよという気持ちで『バース』をつけたんです」。「バースセラピスト」という肩書きは、自ら送った自分自身へのエールなのだ。

 志村さんは、長年、末期がん患者のターミナルケアに携わってきた。彼らの多くは、他人と自分の人生を比べて思い悩んできたことを後悔しているという。誰とも比べなくなった今がいちばん幸せで自由だからだ。志村さんは「この後悔を多くの人がしないように伝えてほしい」という彼らの願いを託され、本を書いたり講演会で話したり、さらに多くの人に伝わるようにと、「ダイアローグ・ジャパン・ソサエティ」の活動を続ける。

 「人は最期まで誰かのために何かをしたいと思っているの。病状は人それぞれでも、役に立ちたい、応援したいと思っているんです。そして、いろんな人たちが応援してくれて、今がある。応援って、されている側は忘れてしまいがちなんですけど、たまには応援してもらっていたんだろうなという人たちを思い出してみてください。そして『ありがとう』と言ってみてください」

 人は身近な人を失うと、心のどこかで「自分のせいかもしれない」と思ってしまいがちだと語る志村さん。講演の最後をこんなエールで締めくくった。

 「あるお坊さんから、こんなお話を聞きました。『供養』というのは『供に養う』と書く。つまり、あなたが幸せで感謝の気持ちいっぱいに相手を思えば、相手も養われて『供養』になるんです、と。だから『ごめんなさい』じゃなくて『ありがとう』という気持ちでニコニコしていてくださいね、とおっしゃっていたことを私もお伝えしたいと思います」