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絵本「ぼくは川のように話す」作者シドニー・スミスさん来日講演 「いろいろ試す」創作秘話を披露

シドニー・スミスさん=偕成社提供

 カナダの絵本作家、シドニー・スミスさんが先月来日し、都内で講演した(日本国際児童図書評議会〈JBBY〉主催)。スミスさんは、英米の絵本賞を数々受賞し、世界で注目される絵本作家。邦訳本は6冊刊行されている。

 講演会では、絵本「ぼくは川のように話す」(ジョーダン・スコット文、原田勝訳、偕成社)の創作秘話を明かした。

 本作は、吃音(きつおん)のある少年から見える風景と、心を救った父親とのやりとりが表現されている。スミスさんは「少年の感情を表すために、異なる描き方を試した。手近の画材を使って実験をしてみた」と語った。

「ぼくは川のように話す」冒頭の見開き=いずれも偕成社提供

 ページごとに、構図やタッチの違う絵が現れる。「アーティストには、自分でスタイルやルールを決めている人もいる。けれどルールに自分が閉じ込められてしまうこともある。今回は『いろいろ試す』というルールにしようと描いてみた」と話した。

 絵を描くときは、絵画だけでなく、映画からも影響を受けているという。本作の冒頭では、主人公の少年がいる部屋の景色を一部分ずつ切り取り、複数のカットで構成してみせている。「絵本と映画は、画面の展開に似ているところがたくさんある。カメラのアングル、シーンの組み合わせ方、光の使い方を映画から盗んでいます」

 参加者から絵本の意義について尋ねられると「子供たちが安心して喜怒哀楽を味わえる場所。本との出会いを通して子供は感情の地図を作っているのだと思う」と応じた。他方で、「絵本は子供のためではなく自分のため、あるいは自分のなかにまだいる子供のために作っている」とも語った。(田中瞳子)=朝日新聞2023年10月11日掲載