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石牟礼道子さん七回忌 池澤夏樹さん「言葉が湧いて出る力あった」

講演する池澤夏樹さん=2024年2月10日午後3時25分、熊本市東区健軍4丁目、杉浦奈実撮影

 小説「苦海浄土」で水俣病患者と家族の苦しみや被害の実態を伝え、2018年に亡くなった作家の石牟礼道子さんを追悼する集い「不知火忌」が10日、熊本市東区の真宗寺であった。石牟礼さんとの対話集などがある作家の池澤夏樹さん(78)が講演し、石牟礼さんの言葉の力について語った。

 不知火忌は石牟礼道子資料保存会と同寺が命日の2月10日に合わせて開き、七回忌の今回は約80人が参加。境内にある石牟礼さんの直筆を刻んだ墓前で静かに手を合わせた。

 同会の松下純一郎理事長(70)はあいさつで能登半島地震やウクライナ侵攻などの厄災に触れ、石牟礼さんがよく使ったという「もだえ神」という言葉を引いた。「遠くにあっても苦しむ人たちを思いながら思いを寄せる」と話した。

 その後、本堂で、親交があった作家の坂口恭平さん(45)と長女のアオさん(15)が石牟礼さんの詩「海底の修羅」にメロディーをつけた曲などを歌った。

 池澤さんは講演で、自身の作品づくりを「設計図を用意して組み立てる」と説明した上で、石牟礼さんについて「言葉が湧いて出る、生み出す、そういう力を持っていた」と述懐。作品を読むと「沼の中に引き込まれるような感じ」がするといい、「生涯で石牟礼さんの文学に会い、本人と親しく話すことができたことは『のさり』(天からの授かりもの)だと思う」と話した。

 池澤さんはまた、自身も10年間住んだ沖縄の基地問題について「石牟礼さんの戦いをたどり直している気がする」と水俣病をめぐる闘争を重ねた。米軍普天間飛行場の移設工事が進む名護市辺野古の現場を前日に訪れたことを明かし、座り込みなどで反対の声を上げる人の存在に触れて「戦っている人がいることを覚えておいてほしい」と話した。

(杉浦奈実)朝日新聞デジタル2024年02月12日掲載

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