図書館司書らがつくる日本図書館協会が「図書館の自由に関する宣言」を採択してから今年で70年。協会は9月、憲法学者の木村草太さんを招いた記念講演会「憲法学者からみた『図書館の自由』」を開いた。司書ら約50人が参加した。
宣言は、憲法で保障された「表現の自由」と表裏一体にある「知る自由」を守るために、図書館は資料収集・資料提供の自由を持つことに加え、利用者の秘密を守り、すべての検閲に反対するとうたっている。
講演に先立ってあいさつした協会理事長の植松貞夫・筑波大名誉教授によると、図書館は戦時下での国家総動員体制のもと、国による図書の検閲に協力せざるを得なかった。当時の協会員は、反省の意識のなかで、この宣言を採択したという。
木村さんは、「図書館の自由」を支える憲法理論について過去の判例や学説を紹介しながら解説。司書の仕事の一つである蔵書の選定には、地域特性を理解しながら市民に提供するべき本を選ぶという司書ならではの専門性が求められるとした。ただし「(蔵書購入のための予算措置といった)文化助成は常に政治的圧力の対象になりえる」とし、専門職としての司書の独立が確保されることによって「知る自由」や「表現の自由」は守られると説明した。
講演は動画で録画され、11月30日~12月1日に長崎で開かれる「第110回全国図書館大会」で公開される。オンライン参加は10月17日まで大会HPから申し込める。(真田香菜子)=朝日新聞2024年10月9日掲載