一見すると新潮文庫、でも開くと真っ白。各ページに日付が印字され、日記や手帳にもなる「マイブック 2025年の記録」(新潮文庫)が6刷12万部と好調だ。10万部を超えたのは18年ぶり。
新潮社によると、この数年で若い購入者が増え、20~24歳は21年版との比較で2・3倍、15~24歳女性は24年版と比較して1・4倍になったという。スマホ隆盛の時代になぜ手書き?
「きっかけは日記界隈(かいわい)」と担当者。手書きの日記を撮影してSNSで共有するZ世代の若者のことで、「マイブック」に書いた日記もティックトックなどに次々と投稿された。「丁寧な暮らしを演出したり書き手の温度感を伝えたりするのに、クラシックな装いの新潮文庫が選ばれているのでは。ごく私的な内容を手でつづることで心の癒やしになっているようにもみえる」
カバーを外した表紙には、名前を書き込む著者欄や「あとがき」のページも。挫折しがちな日記だが、年末には自分だけの「一冊」が完成するのも続ける動機になるのかも。(真田香菜子)=朝日新聞2025年4月5日掲載
