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それが合っている 柴崎友香

 以前スマホのアプリで英会話を学習しているとこのエッセイに書いたが、数か月前から同じアプリで韓国語を学んでいる。英会話から数えて七五〇日以上続いているのは、続けやすい仕組みがあれこれ工夫されているからでもある。

 一日やらなくても次の日にやれば日数を継続してくれるとか、条件を達成すればポイントがもらえるとか(特に何かに使えるわけではない)、達成を細かく記録できることが、私にはいいらしい。一方で、ポイントによって上位にランキングされたり、似た条件の人が表示されたり、という機能は、私には効果がない。他の学習系アプリでも、同じ目標の人と学習状況を表示し合って共にがんばるタイプのものがいくつもあった。そうか、仲間と励まし合ったほうががんばれるという人が世の中にはたくさんいるのだなあ、とそのときに気づいた。

 学生時代に「友達といっしょに勉強する」という感覚が全然わからなかったのだが、私は一人で黙々とやったほうがいいタイプだったということだ。たくさんあった興味あることから小説を選んだのも一人で黙々とできるからだった。人といっしょにやる、もしくは、人と競争するということが、自分にはほんとうにぴんとこないのだなあと実感した。

 どちらがいいということではなく、人には向き不向き、得手不得手がある。「なかなかうまくできない」理由に「教え方が合っていない」がけっこうな割合であるのではと思っている。自分以外の感覚を実感することは難しいので、自分がうまくいった方法をタイプの違う人に伝えても難しい。一人の人間でも、時期によって、あるいはやりたいことによっても違うことだってある。

 このアプリは時限が迫ると「さびしいよ」「もう会えないんだね」などとやたら通知を送ってきてそれがいやでやめた友人も複数いるのだが、それが継続の秘訣(ひけつ)になる人もいるのだろうか。私はひたすらスルーしている。=朝日新聞2026年9月16日掲載