評者: 吉川トリコ
/ 朝⽇新聞掲載:2026年10月24日
わからないまま母と生きる
著者:こだま
出版社:太田出版
ジャンル:文学・評論
ISBN: 9784778341466
発売⽇: 2026/09/18
サイズ: 18.8×1.8cm/192p
「わからないまま母と生きる」 [著]こだま
母親と一心同体だったころを過ぎ、成長するにしたがって母と自分は別の人間だと気づきはじめる。母の言動に傷つけられ、わかってほしいのになんでわかってくれないのと不満を抱くようになり、するとますます差異ばかりが目につき、母親の存在自体が耐えがたいものとなっていく。関係を絶ってしまえば平穏が訪れるかといったらそうでもなく、「母を捨てた」という罪悪感がつねにつきまとう。
本書は、そうした軋轢(あつれき)を抱えた母娘が好きとか嫌いとかを飛び越えて、それでもいっしょにいる様子を書いたエッセイである。わからなくていいし、わかってもらわなくてもいい。「くそばばあ」と毒づきながら隣にいる。死のにおいが漂うようになってはじめて至れる境地。著者自身も含め、家族を傍観し、面白がるような視点で書かれるエピソードの数々は、同じ問題を抱える多くの娘たちにとって、母との関係をとらえなおす示唆を与えてくれるだろう。
それにしても時折挟まれる「せいちゃん」回には腹を抱えて笑った。なぜだ。なぜそうなる。